「お前が何を考えているのかを知りたい」

何を、言っているんだろうと思った。


崩し書きのような簡略さで


「だってお前、普段あんま喋んねーし」

「…あまり得意ではないんです」

人前に立つのは苦手だ。
大きな声で喋るのも苦手だ。
自分のことを話すのも、苦手だ。
強さだけを求められていたあの頃はわざわざボクに興味を示す人なんていなかったから、そんなことはせずにいられた。今は、違う。今はボクを必要としてくれている人たちがいる。あの頃のような、

(テツヤ、)

(君は強いんだよ、)

(力になってくれないか)

「…………」

いつからあんな風になってしまったんだと、何故ああなってしまったんだと今でも思う。後悔する。ボクなんかでももっと何か出来たんじゃないかと、そうしたらみんな、もしかしたら今頃はまだ昔のように楽しいバスケをしていたんじゃないかと。

「また何か考えてっだろ」

くしゃ、と髪を掻き乱された。
ああ、ボクの隣にはこの人がいたんだ。隣にいてくれているんだ。

「お前は普段黙ってっから、正直あんまりお前のこと分かってねえ。全部知るつもりはねえけどよ、」

ボクにはまだ、自分から自分を話す勇気もないから、

「話さねえんなら、オレがお前を勝手に知ってってやるからよ、何ていうか、覚悟しとけよな」

いつもいつも、君に連れ出してもらうのを待っている弱虫なんだ。


言葉の海で見つけたのです

ごめんなさい。
この言葉は飲み込んで。
ありがとう。
この言葉は伝わるだろうか。








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