「火神くん」

「うお、いつの間にいたよお前」

「火神くん」

「おう」

「火神くん」

「何だよ」


この声が好きだ。
この瞳が好きだ。
何もかも全部、好き。

火神くんと話すだけで心が弾む。
名前を呼ばれるだけで満たされる。
一緒にバスケが出来ることが、火神くんに必要だって思われることが僕の全てだ。僕は火神くんの影として相応しい人間でいたい。弱虫の僕は火神くんに嫌われるのが怖くて、必死で火神くんについて行く。影は光に付いていなくちゃならないから。

「火神くん、」

好きです。
心の中で呟いて、それだけで十分だ、と思う僕はやっぱり弱虫だった。


背中合わせの僕と君


オレの影だと言う黒子が、もの凄く、欲しいと思う。オレを光と例え、自分を影と例える不思議な奴。そんな奴に、オレは確かに惹かれている。いつの間にかオレの隣にいて、オレをそっと支えてくれる。

オレを呼ぶ声だって。
キレーな硝子玉みたいな瞳だって。
何もかも全部。

「火神くん」

「さっきから何だよ黒子」

好きだよ。
直接は言えない、弱いオレ。心の中で呟いて、それでいいと言い聞かせる。

お前は自分を影だと言うけれど、オレにとっての光だから。ずっと隣にいて欲しいとただ、願うしかないのだ。








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