桃井←黄瀬


実を言えば初恋は中学生にしてまだ体験したことはなかった。小さい頃からマセたガキだったもので、好意を持たれる、恋愛的なものから友好的なもののそれに慣れてしまっていたからかもしれない。そんなオレの、多分初めて好きになった人の話。

シュガーレス・エスケープ

彼女はオレの憧れの人の幼なじみだった。2人はいつも一緒。アンタら実は付き合ってんだろってくらい、いつ見ても2人はセットで見られた。でも彼女には好きな人がいた。その人はオレの元教育係。オレも彼のことは良い友人として大好きだったから、応援した。いつも可愛い人だったけど、彼を見たり彼と話したりするだけで一喜一憂する彼女がとても可愛いかったから。でも正直な話、彼女には彼よりもオレの憧れてる、彼女の幼なじみの男とくっ付いてほしかった。今だから言えることなんだけど。え、オレはって?んん、オレも好きだったし付き合いたいって気持ちもあったんだろうけど。その頃は、とにかく彼女が笑いかけてくれるだけで良かった。それだけで凄く嬉しかった。今じゃ考えられないでしょ。オレだってそんなこと考えちゃう可愛い中学生してたんスよ。
まあ話は戻るんだけど、オレの憧れてる人、バスケに関してはほとんどチート野郎な男はそれはまあ鈍感というか。試合になるとバシバシ野生動物みたいに空気張り詰めちゃうくせに、恋愛事になると鈍感な男だった。巨乳好きでいっつもグラビア眺めてるけど、実際は女の子のことに疎かった。それは彼女も同じようで、彼女は自分の恋に夢中で気が付かなかっただけなのかもしれないけれど自分が如何に異性から人気があるのか自覚していなかった。顔も抜群に可愛いし頭も良いし、中学生にしては発育良かったし。あ、ちょっとそんな目で見ないで。周りからどう自分が好意を持たれているのか分かってなかったから、オレのことも気にせずにいたんだろうなあ。
オレは彼女の近くにいることを許される人間だった。幼なじみの男と彼女が片思いしていた彼を除いたら、彼女の一番近くにいる男は今でもオレなんだと思う。きっと女の子よりも全然近い、一番のお友達。彼女からの相談も良く受けた。買い物にも付き合ったし、付き合ってもらった。一緒に甘いものを食べに出掛けた。彼女の恋を成功させようと共に奮闘した。結局それは叶わなかったけれど。

きーちゃんは、
好きな人いないの?

きーちゃんに好きになってもらえる女の子は幸せだね。だってきーちゃん、すごく格好いい優しいし。

きーちゃん好きな人出来たら絶対に教えてね。応援するからね。

私、きーちゃん好きだよ。
私の大事な、大好きなお友達。

きーちゃん、

幸せになってね。

「その呼び方止めてって言ってるのに」

彼女は笑ってる。オレの大好きな、あの笑顔。彼女の隣にはよく知ってる男。ああ良かった、本当に、良かった。オレの大好きな2人が一緒にオレに向けて笑ってくれている。それだけでやっぱりオレは満たされちゃうんだ。

「おめでとっス、桃っち」

オレの大好きな、大切なお友達。

無神論者の僕が唯一神様に感謝していること
素敵な恋をありがとう








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