※年齢操作、しょた長谷部注意
*へしきりはしぇべを鍛刀しました*
「あ、主……それは?」
「いや、何か鍛刀するのに失敗?しちゃったみたいで……」
「……そうですか。でも、どうして主のお膝に乗せているのですか?」
「えっ、だって可愛いから……子供だし」
だからと言って膝に乗せるのはどうなんですか主。苦笑する主の膝の上に鎮座しているのは幼い姿をした俺だった。見た目でいえば短刀とそう変わらないか、それより少し幼いくらいだ。
主に頭を撫でられて嬉しそうにはにかむな、幼い姿とはいえ「俺」なのだからだらしない顔をするな。
主の膝に乗る「俺」に対する苛立ちが腹の中に積もっていく。ああ、くそ。そんなことで主の忠臣になれると思っているのか。主の御前で情けない姿を曝すな。俺だって主にそうやって頭を撫でられることは少ないのに。……待て、これではまるで「俺」に嫉妬しているようではないか!
「……主、甘やかすのも程々にしてください」
「えぇ……可愛いのに……?」
「駄目です。奴が付け上がります」
「えぇー……お父さん厳しいね」
「あるじ! やつはおれの親ではありません!」
主の膝の上で大人しく頭を撫でられていた「俺」が声を荒げて主の発言を否定する言葉を吐いた。主の御前で声を荒げるな、主のお言葉を否定するな、みっともない。
それよりも、待ってくれ。主の言う「お父さん」とは俺のことを指しているのか? 俺が奴の、親? いや、親という役割ならば主のほうが相応しいのではないのだろうか。鍛刀したのは主なのだから、主は産みの親も同然だ。主が母親で、俺が…………。
「…………ッ!!」
もしかして、もしかして主は遠回しに俺と夫婦(めおと)になりたいと言っているのか? 俺との、子がほしいと?
かっと顔に熱が集まるのを感じた。気を抜くと顔が緩んでしまいそうで、爪が食い込むほどに強く手を握り締める。主は鍛刀に失敗したと言ったが、もしかしてこれは必然だったのではないだろうか。燭台切光忠や宗三左文字ではなく、他でもない「俺」を鍛刀した。これはつまり俺との子がほしいという主の深層心理を表しているのではないのだろうか。そうか、結ばれたいと願っていたのは俺だけではなく、主もだったのか。主も、俺を……。
「あ、主……」
「うん? なに?」
「立派な男に育てましょうね。あなたのためならば家事、育児であろうともこなしてみせます」
「だから! おまえはおれの! 親じゃない!」
「ははっ、そう吠えたところで主はお前の親である前に、父である俺のものだという事実は変わらん」
「あるじは! おれのものだ!」
主と俺の子だと思えば奴の態度も可愛いものではないか。この生意気さや落ち着きのなさも教育して、必ずや立派な男に育てると誓いましょう。
「えっ長谷部なに言ってるの……」と主がぼそりと呟いた気がした。そう驚くことはありませんよ。俺なら、主の思っていることくらい言わずとも分かりますから。素敵な家庭を築きましょうね。