連日の作業で肩が痛い。我が本丸の戦績や資材の数などをレポートにまとめて政府に提出しなければならないだなんて、どうしてそんな事をしなければならないんだ。政府の人がこちらに偵察に来たら良いじゃないか、という愚痴は心に留めてレポート制作に勤しむ。私は政府からお給料をいただいて審神者業をやらせてもらっている身なので本来は文句など言えないのだ。いや、でもこの肩の痛みは尋常じゃないだろう。死ぬ、作業なんてもうできない。

「は、長谷部ー!ちょっと来て!」

「はい! お呼びですか主!」

 少しマッサージをしてもらおう、そう思って長谷部の名を呼べば間髪入れずに返事が返ってきた。いくらなんでも早すぎやしないだろうか。今までどこに隠れていたんだ長谷部。少なくとも私の部屋にはいなかった。まさか、廊下にでも控えていたのだろうか。いつ声がかかるかも分からないのに、ずっと? えっ何それ引く。

「何か御用がお有りでしたでしょうか?」

「あっ、えっとね、連日の作業で肩が凝っちゃったから少しマッサージでもしてもらおうと思って……」

「お任せください」

 そう言って長谷部は徐に布団を敷き出す。少し肩を揉んでもらう程度で良かったのだが、もしかして長谷部は本格的にやるつもりなのだろうか。真面目な長谷部の事だ、"マッサージ"と言われたからこうして本格的にやろうとしているのだろう。"肩を揉んで"と言わなかった私が悪かった。しかし本格的にやってくれるというのならある意味有り難いかもしれない。そう考えているうちに長谷部は布団を敷き終わり、私はその上にうつ伏せの形で寝そべる。長谷部の指が私の首元に置かれ、首周辺のツボを刺激する。痛すぎず、だからと言って弱いわけでもない、丁度良い強さの指使いが気持ち良い。

「主、痛くはありませんか?」

「ううん全然…すごく気持ち良い……」

「そうですか。…………どこに効果のあるツボがあるのか、服の上からではよく分かりませんね」

 少し脱いでいただけないでしょうか、そう言い放ち私の着物に手をかける。私の答えを聞く気はないのだろう、返答を待たずに襟元を開かれ、それを帯のあたりまで下ろされる。上半身の肌を晒す形になって若干の羞恥を覚えるも、長谷部は意に介さずマッサージを再開する。いつの間にか長谷部も手袋をとっていたのだろうか、肌と肌が触れ合う感触がする。外気に晒された肌に触れる長谷部の掌の熱さが心地良くてそっと息を吐く。しばらくすると、つ、と長谷部の指が首元から腰のあたりを滑り、そのくすぐったさに思わずびくりと体が跳ねてしまった。ただマッサージする箇所が首元から腰へ移っただけ、なのだが時折指が私の脇腹を掠めるたびにくすぐったくてびくびくと震えてしまう。重度のくすぐったがりで、マッサージなどで体に触れられるのが苦手なのをすっかり失念していた。しかし長谷部は真剣にやってくれているのだ、笑っては失礼だろう。私がくすぐったがっていると知ったら、主にそんな思いをさせる未熟な俺が許せない、なんて言いながら切腹しそうだ。それは避けたい。しかしそのくすぐったさに耐えられるはずもなく、相変わらず体は跳ねるし笑い声を押し殺しているためふっふっと息が漏れる。確かに気持ち良いのだがくすぐったさに勝てない。頻繁に震える私を不審に思っていないだろうか。私としてはいま物凄く恥ずかしい。そろそろ止めてもらおう、そう思って顔を向けると、存外近くに長谷部の顔があって一瞬息が止まった。

「主もしかして、いやらしい気分になってしまわれたのですか?」

 そう耳元で囁かれ驚く。違うんだ、そういう意味で体が跳ねていたわけじゃないんだよ、ただ少しくすぐったかっただけで。そう伝えようとしたけれど、長谷部の熱の篭った目に見つめられて心臓がぎゅうと掴まれたような感覚に陥り、思わず閉口する。何も言わない私の腰をするりと撫でられまた体が震える。

 このあとめちゃくちゃセックスした。
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