「アサシン! ワイバーンお願い!」
「いいよぉ!」
そう返事をし、アサシンは跳躍する。その速度を保ったままワイバーンに踵落としを喰らわせ、その直後、絶え間なく拳を浴びせる。
アサシンの怒涛の攻撃を受けたワイバーンは地に伏し、サーヴァントが座に還る瞬間のように、光を纏って消滅した。音もなく私のもとまで戻ってきたアサシンは、「あっけねぇなぁ」と軽く拳を振るって籠手に付着した血を落とす。ワイバーンを何体も相手にしたにも関わらず、アサシンの息は乱れていない。傷のひとつも付いていない。
ああ、ワイバーンを秒殺できるだなんて、アサシンはなんて強いのだろう!
「アサシン、お疲れ様! いつもありがとう!!」
「いやぁ、これくらい俺様にかかれば楽勝だからなァ。そんなに感謝されるほどじゃねぇよ」
ははは、そう豪快に笑い、アサシンは私の肩をぽん、と叩く。アサシンからの急なスキンシップに、思わず心臓がどきりと高鳴った。
「それだけじゃねぇ。アンタの采配もなかなかのモンだぜ? 将来が楽しみだ」
「!! ほ、本当に? 本当にそう思う?」
「ああ、本当だ」
アンタならきっと人理も救えるさ。そう言ってくれた彼の言葉があまりにも嬉しくて、頬が緩むのが抑えられない。気を抜けば、だらしのないニヤケ顔を披露してしまいそうだ。
そんな私に気付いているのか、アサシンはポン、と私の頭を撫でた。撫でると言うより、どちらかと言えば子供をあやすように優しく叩く、と言う表現のほうがしっくりくるものではあったが、それでも私の胸の高鳴りは止まらない。
触れ合えば触れ合うほど、アサシンに惹かれて行く。彼への興味が湧いてくる。隠されたアサシンの真名を、一刻も早く知りたいと思う。
彼ともっと親睦を深めたい。そう思い、勇気を出して口を開く。
「あ、あのね、アサシン! この後カルデアでちょっとした宴を開こうと思ってて、私は飲めないんだけどお酒とか料理とか色々用意してて、良かったら――」
「いや、それは行けないわ」
私が最後まで言葉を発するよりも先に、アサシンはにべもなく断りの言葉を吐いた。まさかこんなにもバッサリと断られるなんて思ってもみなかった。まさに一刀両断。自身の身体を真っ二つにされた気分だ。
「な、なんで……?」とアサシンに理由を尋ねる私の声は、思った以上に震えていた。そんな私とは対照的に、アサシンはさも当然のような顔をして「いやいや、どう考えても行けねぇだろ」と言った。
「アンタ、俺がサポートで来ただけのサーヴァントだって忘れてねぇ? 俺のマスターはナマエただ一人なの。だから俺はアンタのカルデアには行けない」
「………………」
「宴は自分たちだけで楽しんでくれ。な?」
「………………」
「……………………」
「…………や、やだぁあああああ!!! アサシンお願いだから帰らないでぇええええええええええ!!!!!!!!!!」
「うわっ」
「ウチに来てよぉおおお!!!!! ていうか避けないでよ!!!!!!!!!」
「いや、だって鼻水付いたらばっちぃし……」
泣きながらアサシンに抱き付こうとした私を、彼は容易く避けて見せた。アサシンに避けられたせいで、私の身体は地面にダイブする。あら痛そう、なんていうマリーの声が私の耳に届いた。
ほぼゼロ距離だったにも関わらず避けるだなんて、一体彼はどれだけ反射神経が良いのだろう。さすが、アサシンのクラスは伊達じゃない。ますます格好良い。悔しい。
それから、ナマエさんのだったら鼻水だろうが何だろうが平気な事を私は知っているからな。私だけが汚いみたいな扱いしやがって、ちょっと顔がいいからって何なんだこの無頼漢は。……いや、見れば見るほど本当に顔がいいな。悔しい。悲しくなってきた。
「なんで私の所には来てくれないのぉ……」
「いやそれは知らねぇけど……。ただ、ちゃんと俺と向きあって、ちゃんと信頼を積み重ねてくれたナマエだけが『俺』のマスターなの。だから俺はナマエを裏切るような真似は、たとえフリであってもできねぇよ」
「………………」
「アンタの所に来るアサシンは『俺』とは違うだろうけど、召喚された暁には精一杯可愛がってやってくれ」
「…………うん。がんばる……」
おう、頑張れ。そう言ってアサシンはにっこりと微笑んで、また私の頭を撫でてくれた。
「んじゃ、俺はそろそろ退散するかね」
そう言って立ち上がったアサシンは、私に向かって右手を差し出した。いまだ地面に倒れ込んだままの私に手を貸してくれると言う事なのだろうか。にべもなく振られた後だったが、こうして優しさを見せてくれる所に思わずまたキュンとした。
「あ、ありが――……」
「いや、ちげぇよフレポ。それがねぇとナマエン所帰れねぇからさぁ」
そういう所だよ! クソ、顔がいいからって何しても許されると思うなよ。いや、何だかんだ言って私は許してしまうのだろうけれど。
私の愛情を込めた25ptを喰らえ!! そう怒りを込めて投げつけたポイントを易々とキャッチし、アサシンは「やったー、これでナマエ喜んでくれるかなぁ」と笑った。