そのいち、衝動は抑えましょう // リヴァエレ

Side Ellen

 年上、上司、人類の希望、同性、挙げ出したらキリがないほどの壁。
 でも、この恋を諦めなくてはいけない最大の理由はオレが化け物だっていうこと。

 故郷を追われ開拓地に行ったとき何かと良くしてくれた女性がいた。
 その彼女は言っていた、叶わない恋をしたときはその恋の衝動を抑えることが大切よ、と。そういって笑いながら瞳から涙をこぼした彼女は何処かの貴族の妾になったらしい。

 恋を諦めるのは簡単じゃない。でも、この恋は諦めないといけない。
 彼女は恋を諦める三つの方法をオレ達に教えてくれた。
 十以上も離れていた俺達に恋愛の話をしてくれたのは、きっと彼女自身に諦められない恋を押さえつけるためだったのだろう。
 でも、今こうしてオレの中で生きづきそして、糧となっている。

 その一、衝動を抑えること。
 その二、一定の距離をとること。
 その三、この恋はまやかしだと思うこと。

 この三つを教えてくれた彼女にオレは何て返しただろか?

 今はもう、覚えていない。
 でも、最後に彼女が続けた言葉は今でもはっきりと覚えている。
 夕闇が迫る中、冷たい風が彼女の髪を靡かせ赤い光でキラキラ光る中、諦めなくてはいけないときでも、心の奥底に秘めているのは自由なのよ、そう言った彼女の横顔は酷く美しかった。

 この恋の気持ちに気付いてからのオレの行動は早かった。
 もともと、思い立ったら即行動するたちだったのが幸いした。
 彼女に教わった通り、公に捧げたはずの胸が痛み苦しむのをグッと押さえつけ訓練や自由時間では兵長と二人きりにならないように気を付けた。
 でも、それでも、最後の一つがどうしてもできなかった。
 オレの心に生まれた恋がまやかしだと思うことを嫌がった。
 まやかしだ、そう思うごとにツキリ、ツキリと痛み忘れるな、忘れるなと存在を証明しいていた。

 忘れさせてくれ!!!!

 忘れるな!!!!

 相反する二つの思いがオレの心を締め付ける。

 「ごめんなさい、兵長。」
 まだ、この恋を終わらせられません。

 だから、もう少しだけ。

 心の奥底にこの思いを生かさせてください。

 そして、今日もオレの心は涙を流す。



 Side Levi

 エレンからの煩い視線の意味を知ったのはアイツと出会ってから間もないころだったと記憶している。
 アイツのような視線を寄越されることは少なくない。
 人類最強でいると、男でも女でもああいった視線を寄越してくる。
 何時もの俺ならば、気にすることもなく日々を過ごしていただろう。
 が、アイツは違う。
 金色の瞳がじっと俺を見透かすように見つめる。
 それなのに、見詰める意味を理解していない。
 うざったい視線ではあったが、不思議と悪くないと思えていて暫くしたら俺からアクションを起こしてみようかと思える位には気に入っていた。

 が、ある日を境にその視線が露骨なほど途絶えた。
 そればかりか、俺と同じ空間にいたくないとばかりに避けやがる。
 無意識のうちにイライラし、ハンジの野郎にからかわれた。
 もちろん、それ相応の報いは受けてもらったがこの苛立ちは収まらなかった。

 待つのも、このままなのも性に合わない。

 地下室に足を運ぶ。
 そのまま部屋に入ろうとすると、ごめんなさい兵長という声が聞こえる。

 何に対しての懺悔だ。
 苛立ちが最高潮に達し、ドアを蹴破ると驚いたエレンの表情に少し胸がすくきがした。

 「その謝罪は、どういう意味だ。」

 あまりの驚きに声も出ないのをいいことに、俺は更に畳みかける。

 「最近お前、俺を避けているよな。なんだ、今さらになってあの時の躾に対して恨みでも出てきたか?」
 「ち、違います!」
 「なら、どうしてだ。」

 そういって詰め寄ってやれば、瞳が大きく見開かれ潤んでくる。
 その煌めきは、宝石のようで美しいと感じる自分がいるのに気付いた。
 が、そう俺が思っている間にエレンは部屋から逃亡しようと扉に駆けるのでそれをさせまいと腕を掴みそのままベットに押し倒す。

 「言え、エレン。あの視線の意味を、お前の気持ちを。」
 「言えません・・・言えません!!!」
 「言うんだ、エレン!!!」

 脅す様に低く耳元で言えばエレンは力なく閉じ瞳から一滴の涙をこぼし薄く唇を開く。

 「き、です・・・好きなんです!!でも、オレと兵長は同性で、年上で、上司で、人類の希望でそれから、オレは化け物です!!!!化け物からの好意なんて嫌でしょ兵長!!だから、オレは、」
 「諦めようとした、か?自惚れるなよ、くそガキ。誰がお前を化け物と言った!誰が嫌だといった!いつ俺がお前からの好意を無礙にした!そしてどうしてお前は俺がお前を好きじゃないと決めつけた!!!」
 「え?」
 「エレン、言え。お前の本当の気持ちを、」
 「へ、いちょ、う・・・す、きです、好きなんです・・・この気持ち諦めたくないです!!!好きなんです!!!!」
 「俺も好きだ、エレン。」

 そう俺が答えると、金色の瞳を涙で濡らしながら笑ったエレンに思わず唇を重ねていた。
 重ねた唇は酷く甘い味がしたが、悪くないと思えた。


あとがき

素敵な企画に参加させていただきありがとうございます。
久しぶりの執筆で、すごくドキドキしながら書かせて頂きました。
進撃に嵌り、沢山の人とこうして交流が持てることを一ファンとしてとても光栄なことと思います。
この度は、神埼様を初めこの小説を読んでくださった方全ての方に感謝を申し上げます。
また、縁が有れば企画等参加したいと思います。
あと、一応pixivで執筆してるのでご縁があればそしらでもお願いします。
それでは、最後になりましたが私の小説の拝読誠にありがとうございました。
之にて筆を置かせていただきます。

―――――

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