まだ少し幼さが残る、でも忘れることない、剣心。

「剣心!」

思わず私は叫んだ。

「剣心...?違う、俺は、」
剣心は何かを言いかけたけど、私には聞こえなかった。ううん、聞かなかった。抜刀斎だなんて、剣心の口から聞きたくなかったのだ。剣心は剣心。抜刀斎でも剣心だから。
まだ十字傷のついていない頬を撫でる。

「剣心..、」

ああ、泣いちゃだめなのに。ぽたぽたと涙が雫となって乾いた地面を濡らしていく。
「..俺は本当は剣心、だ...。」
「うん。知ってる。あなたは剣心、緋村剣心。」

私はあなたのことを知ってる。これからとても辛いことがやってくるんだよ。恋して悲しんでさ迷って。あなたは誰よりも自分を責めながら罪を償おうとする。その背中にどれだけの重いものを背負ってるの?その心にはどれだけ深いものを隠してるの?私はあなたの為になりたい。いつかは十字傷が出来てしまうなら、今はあなたを支えたい。過去も未来も支えたい。


「剣心、そばにいさせて」

目を丸くさせて、優しく涙を拭った手は暖かく、命を奪っていく手じゃないようだった。


(いつの日か、笑顔でいられるように)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -