「名無しさん!」



ノックもなしに入ってきた宗次郎はいつもと違い焦ったような表情。
ベッドに横たわる私に近づいて来ると
おもむろに私の前髪を掻き分け、おでこをくっつけてきた。




「やっぱり熱いですね」




平然と言ってのける。
その前にこの近さどうにかして。
今宗次郎のせいで熱が1度は上がった気がする。
やっとおでこを離した宗次郎はベッドに浅く腰掛ける。
大丈夫ですか?と子犬のような瞳で問いかけてくる。
きゅん。
これが年下の威力。




「大丈夫、ただの風邪だから」

「心配です…」

「大丈夫だよ。ありがとね、心配してくれて」

「…」




宗次郎は布団から出ていた私の手をそっと握った。
宗次郎の手が冷たいのか、はたまた私の手が熱すぎるのかわからないけど
私たちの手は対照的だった。
熱い、と呟いた宗次郎は急に立ちあがり部屋から飛び出して行った。










うとうとと眠りに落ちそうになっていると、再び扉が開いた。
入ってきたのは宗次郎。
手にはお盆。
その上にはお茶碗と、さじと湯のみと林檎が乗っていた。
そして小脇には水の入った桶と手拭い。




「お粥作りました。その…よかったら食べてください」




優しく微笑む。
宗次郎はベッドに座った。




「食べれます?」

「うん。作ってくれたの?」

「教えてもらいながらですけど」




起きあがると少しクラッときた。
宗次郎はそっと私の肩をおさえてくれた。
そしてお粥をさじで軽く混ぜはじめる。

その手に火傷らしき赤い痕があった。
慣れない料理に苦戦する宗次郎が想像できる。
薬塗らなきゃ、と思ったが宗次郎の気持ちを考えると何となくそれは言えなかった。

私はみて見ぬ振りをした。
でもちゃんと頭に入れといたからね。
火傷しながら頑張ってくれったってこと。




「ありがとう」

「いいえ、これくらいしかできませんので」




はい、あーんと宗次郎はさじを私の口に近づける。
しかし、体を傾けての行動だったからか、さじも一緒に傾き
そこに盛られていたお粥は私の口にはいる前にボタボタと落ちた。




「わああ!ごごごめんないさい!」

「大丈夫だよ」

「ごめんなさい…」




申し訳なさそうに眉を顰める。
よしよしと頭を撫でてあげると宗次郎は少しだけ目を細めた。
再びさじにお粥を盛り、息を吹き掛けて冷まして、あーんと言って私の口に寄せた。
今度はしっかりと口に入った。




「ん…ん!美味しい!」

「ほんとですか!?」

「うん、すごく美味しい」

「よかったです!」




安心したように宗次郎は微笑んだ。
美味しいと言われた事と私が全て平らげた事がよっぽど嬉しかったのか
看病魂に火がついたかのようにしきりに
何かして欲しいことはないですか、と聞いてくる。
特にないと言えば寂しそうにするし
そうだなぁ、と悩む風にすれば嬉しそうに次の言葉を待っているし。

なんて可愛いんだろう。

宗次郎は私の額の汗を慣れない手つきで拭ってくれる。
それがなんだか無性に母性本能をくすぐるのだ。




ありがとう、そう呟く。
でもさっき持ってきた林檎を真剣な表情で剥きはじめていた宗次郎にはきっと届いていない。
ぶちぶちと切れる皮を見て思わず笑うと
宗次郎も恥ずかしそうに包丁を持った手の甲を口元にあてて笑った。




「笑わないでくださいよ」

「ごめん・・・ねえ宗次郎、」

「なんです?」

「私が寝るまでいてくれる?」

「もろろんです。ずっといますよ」




うさぎ、のつもりらしき別の生命体の形をした林檎を差し出される。
なんだか、とっても胸が温かくなった。








一生懸命な君に幸せを感じる







***********

4000HIT記念、さりこ様に捧げます。
うーむ、なかなか難しかったです。
宗次郎がただの不器用な男に成り下がりました。笑
書いてる途中で何度も厭らしい方向に向かいそうになりましたが
なんとか自制心を持って踏みとどまりました。
こんな駄文でよければお持ち帰りください!
リクエストありがとうございました!!
これからもROMANTICを宜しくお願いします!


椎名




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