はじめて門の前に立った時
これからどんなことが待っているんだろうって不安になった。

華やかな世界。
私はやっていけるのだろうか。
だけど私は覚悟を決めた。






いろいろと指導を受けて、初めて先輩の遊女さんたちに付き添ってお客様の接待をした。
お酌をしていると、可愛いよ、美人さんだね。そんな言葉を掛けられた。
そして体を触られた。
予想はしていたけど、私は動揺していた。
でも抱かれることはなかった。

私は新人だから、そういうのはきっともうちょっと先なんだろう。



それから一ヶ月、私はお客様の接待をし続けた。
もちろん抱かれはしなかったけど。
お客さんはやっぱり体が目当てなのか
心のこもってない言葉をいとも簡単に言ってのけ、体を触る。
こんな世界だとわかっていた。
でもなんだか切なかった。





そんなある日、ある一室にお酒を届けに行ったとき
包帯だらけの方と、若い方がいた。
その青い着物を来た方は、とても綺麗な顔立ちをしていた。
ふいに目が合うと、少しだけ微笑んだ。
途端に胸がざわつく。
私は急いで部屋から出て行った。






それから二週間後、私は先輩に呼び出された。
瀬田様という方の接待をしなさいと。
しかも今回は私一人だけ。
不安だった。


襖の前でお客様の名前を呼ぶ。
返事がない。
入ってもいいのかな。




「失礼致します」




襖を開ける。
そこにいたのは、あの青い着物の。
私は名前を名乗った。
そしたら彼は微笑んだ。




「瀬田です。瀬田宗次郎」




着物の色のようなとても爽やかな人だった。
そして彼は他のお客様とは違うようだった。
私がいつものように頭を下げると、普通にしてくれって言うし。




「今日は寒いですね」




そう言うと彼はニコリと微笑み、上に羽織っていた上着を私の肩に掛けた。
びっくりした。
ここにくる人はみんな自分の為だけに来て
遊女のことになんて一切気を遣わないものだと思ってたのに。
初めてのことに私は動揺した。
そして上着に残る彼の温もりが体を包み込む。


なんだか、不思議な人。
でもとても――。










初めまして、瀬田様




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