「なんで・・・こんな」

「え?あはは、大丈夫ですよぉ」



宗次郎さんの首からは血が流れる。
でも本人はいつものようにヘラヘラ笑っている。
なんか、許せなかった。
命に関わることなのに、なんで・・・。
私の手は無意識に動いていた。
右手には宗次郎さんの頬の感覚。
彼は驚いたようにその頬を押さえた。




「バカ!」

「なっ、」

「もう知らない・・・」

「名無しさんっ、」

「・・・」




腕を引かれる。
宗次郎さんの瞳は、少しだけ曇っていた。




「なんで怒ってるんですか」




なんでって・・・。




「宗次郎さんが心配だからに決まってるじゃない・・・」




そう言うと彼は嬉しそうに目を細めて笑った。




「心配してくれてるんですか?」

「・・・ん」

「ふふ、うれしいなあ」




ほらまたそうやって笑うんだ。
私はこの笑顔に弱いから、全てを許してしまう。
引き付けられるようにそっと宗次郎さんの頬を両手で包み込む。
そして優しく口づける。

この笑顔が、消えませんように。
なぜだかわからない。
涙が溢れた。








願う





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