■ 白く白く、赤い。(蝶蝶)
「なぁ、寒いぞ。」
任務終了後、雪の降るこの町をこの辺では一番高いであろう木に登り枝に腰を下ろして眺めて居たのだが…この人が逃げても逃げてもついて来て今に至るのだ。
帰ろうぜ花子ー。そう口にする蝶蝶さんは口を尖らせ、此方を見ながら身体を丸めガクブル震えている。
じゃあ、戻ればいいじゃないですか。と言えば、はぁ?と呆気に取られた様な顔を此方に向け馬鹿かお前と一言。
「蝶蝶さん程ではないかと。」
「うるせーな!お前を置いて頭領の俺だけ帰れる訳がねぇだろーがよ!」
お前の減らず口は治らねえのか俺は頭領だぞなんて言う蝶蝶さんは、自然な動作で懐から煙草を出し火をつける。
あれ、確かやめたんじゃ…
「あ…お前、内緒にしとけよ!」
鴛鴦にバレたら破局だ破局!と慌て始める。なんだ、言ってしまおうかな。
むしろ、破局してしまった方が私には都合が良い。ずっとこの人が好きだったんだもの。鴛鴦さんよりもずっと、ずっと。
「い、言うつもりじゃねーだろーな、花子!」
「ふふふ。」
あがが…何て固まる蝶蝶さん。
なんて顔してんですか、まったく。そんなに、嫌なら吸うなよ。
「嘘です、言う訳ないじゃないですか。」
なんだよーと明らかにホッとして枝に座り直す。
ジッと見つめてくる水色の瞳を何ですか?と見つめ返すと、手をずいっと出してきた。なんなんだ。
「ん、約束だよ!約束!」
見ると小指を立たせている。ああ、ずるい人だ。指を合わせ握ると蝶蝶さんの熱が私に伝わる、指が暖かい。
「ぜってー言うなよ!ズルしたらその時点でお前俺の下僕だからな!!」
「あー、はいはい。」
吐き出す息は白く白く。
私の耳は赤く、ああ寒さの所為に出来て良かったと手をこすり合わせた。
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(馬鹿だなぁ…私。)
"なぁなぁ、花子帰ろうぜえ"
もう、ほんっとマジで頼むからよぉと体を震わせるこの人を愛しいあまり里に帰らせたくない。嫌で、嫌で堪らない。
"喫煙の事、言っちゃいますよ?"
貴方の恋を利用してでも一緒に居たくて、私は意地悪をし続ける。
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