■ 運命とは呪い。(銀閣)
寂しいなど思った事がなかった、思う訳がなかった。それが俺の運命だったからだ。
その俺を変えたのが、半年程前に出会った女だ。名を花子と言う、今の時代じゃあ、十八にして未婚、挙げ句の果てには剣士と抜かしやがる物珍しい女だった。
物珍さはそれだけじゃあない、刀目当てに訪れる刺客だけだったこの城に、砂漠しかないこの地に俺に会うためだけにひと月に一度は必ずこの城に訪れるのだ。
同情してんならあり難く頂戴しといてやる、だからもうこんな所に来る必要はねぇ。と言った、そしたらあの女何と言ったと思う。
「調理場に糠床を置きましたから、たまに回しにくるついでです。」
ついで、だと抜かしやがる。
糠床は確かにあった、だが回し来たついでで料理を作り、丸一日話をして笑顔で帰る。
俺なんかと話して何が楽しいのか分からないが、俺も段々とこの娘に心を許し始めちまった事は分かる。多分、いやきっと俺は彼女の事を好いている。
現に、ふとアイツは次いつ来るだろうか、転んで怪我なんてしてねぇだろうな、なんて俺には不釣り合いな事をつい考えてしまっているのだ。
少女とは違い成人へと出来上がった身体、顔立ち、自惚れでないなら街を歩いたら男は殆どが振り返るのではないかと思う程だ。
まぁ、変わり者のあいつの事だから普通の男に惚れる事は無いとは思うが内心次来た時にはそんな色恋の話をされるんじゃねぇか冷や冷やしている。
ああ、ここをアイツと一緒に出れたらどんだけ幸福な人生が待っているか。
それは、できない。
ああ、好きだと伝えて永遠に添い遂げることが出来るならあいつを、それもできない。
何故なら俺の運命は先代から決められているからだ。この城と共に…
まさか、ここにずっと一緒に居てくれなどと言うつもりもない。自分より一回り以上も若く、外の世界を知ったばかりのあいつを、こんな所に止めとくなど出来るはずがないのだ。
自嘲的な薄笑いを浮かべ自分の運命を呪う。
「つまらねぇなぁ…」
そう呟き、ガタガタガタガタといつまでたっても開けれないこの襖を俺が開け、俺を見た時のお前のその笑顔を思い出し、くつくつと喉を鳴らして笑った。
さて、寝るかな…
次に襖を開けるのは、刀を狙った刺客か、それとも俺か。
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初銀閣夢、ハマってしまいそうです。
この裏の続編を書きたい書きたい!!
もう私ならずっとお城に居ますけどね(笑)
銀閣さんの花子への思いがヒシヒシ伝わってくれれば嬉しいです。
感想お待ちしてますm(_ _)m
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