■ 虫組を愛した後輩。(第四話)

※死ネタ、シリアス。
虫組の死ぬところはもう見たくないという人はBACK推奨。虫組を愛してやまない、わたしも虫組と一緒に七実を倒しに行くという人は是非。


うごけ、動け動け動け、足が震えて身体がいう事をきかない。くそ、くそっ、涙がボロボロ溢れてくる、遠くから監視を命じられていたその役割はあまりにも残酷なもので今すぐにでも双眼鏡を下ろしてしまいたかった。

一番初めに蟷螂さんが、二番目に蝶蝶さんが殺された。そして今まさに蜜蜂先輩に七花の姉が放ったまきびし指弾が肩に命中して地面に倒れてしまった。
蟷螂さんの時も、蝶蝶さんの時もわたしはこのレンズ越しに状況を見ていた。わたしも虫組頭領の後釜としてこの任務に駆り出されたのだけれど、まさか七花の姉があんなに強いとは思いもしなかった。あんなの、勝てる訳がないじゃないですか。


蝶蝶さんの戦いを観ている際に震えているわたしの隣へ蜜蜂先輩が腰をおろした時の事が脳裏に過る。

いやだ、このままじゃ蝶蝶さんが死んじゃう。

「僕等は忍です」

だからって、皆が死ぬのは嫌だ…今までずっと一緒に居たじゃないですか、なんでそんな事言うんですか?

涙を流して言葉を喉に詰まらせたわたしを見て微笑み、わたしの肩をぽんと叩いた蜜蜂先輩は「僕が絶対に仇を取ってきます」と言った。駄目だよ先輩だって敵いっこないと腕を掴もうと伸ばした手は空中をきる。

やだ、やだやだやだよ。

「絶対に許しません」

蝶蝶さんまでを手に掛けたその女のいる方を見て奥歯をぎりりと噛んだ蜜蜂先輩はそのまま姿を消してしまったのだった。

あろう事か、わたしは蜜蜂先輩を追いかけてきてしまったのだ。声が聞こえる程の距離まで来てしまった事に焦りを感じた。わたしなんかが近くにいても何もできないのに…ふぅ、ふぅ、と息を潜めながら監視をする。

今先輩のウデにはまきびしが刺さっている。で、でも先輩はきっとその毒に耐性を持っているはずだと思っていれば先輩も同じような事を口にした。そうだ、そうだよ。大丈夫。あの女が油断して蜜蜂先輩に近づいた瞬間にわたしがその胸に風穴を空けてやる。そう思ったのに、その思いはすぐに打ち砕かれた。

「ぅ、ああああああ!!」

ぴたりと動きを止めた蜜蜂先輩がいきなり苦しみ叫び声をあげた。

彼女は鬼だとわたしはだらりと手を垂らした。あの一瞬の間にどうやって蟷螂さんの毒をまきびしの毒の上から塗ったと言うんですかありえない。頭がガンガン鈍器で殴られているみたいに痛い。蝶蝶さんの煙草とか三人一緒の墓とか意味わかんない。聞こえてきても頭がガンガンしていてもう駄目、なんにも考えられない。

「意外と長旅で疲れたろう、何事もないからここで監視しつつ休め。すぐ戻る…分かった、帰ったら団子を食いにいこう。皆でな」

「か、ま…螂さ…っ」

「鴛鴦ってよぉ、こうボンッキュッボーンだろ?もうほんとやばい俺の鼻の下が大変な事になる、どうしようぺちゃのお前からしたらどーなの、やっぱ羨ましいの!?ごめんなさいごめんなさい上から頭叩かないで縮んじゃうだろ」

「…う、ちょう…さん…」

「いつも後ろをついて来てくれる花子さんが居るから皆頑張れるんですよ。これからは、四人揃って虫組です」


「みつ、いやぁ…蜜蜂先輩っ!」


地を蹴り走り出した時、見た光景をわたしは死んでも忘れないと思う。

目を見開いてわたしの名前を叫ぶ蜜蜂さんの姿と、目の前でひどく口を歪めて笑う七花の姉の姿。歪められた口から出た言葉にわたしは胃の中のものを全て吐きそうになる。わたしは何で出てきてしまったんだろう、ひどく滑稽で惨めで…ああ、ほんと思惑通りじゃないか。



「やっとでてきた」



私の目線は七花の姉越しに悲痛に表情を染める蜜蜂さんがわたしに手を伸ばしているのが見えた瞬間、地に落ちた。

ねぇ、蟷螂さん蝶蝶さん蜜蜂先輩。わたしは本当に役立ずで失敗ばかりで泣き虫で、皆が居てくれないと不安で仕方ないんです。最後までダメダメな後輩でごめんなさい。でもわたし皆が大好きで大好きで…ってあれ蜜蜂さんはなんでそんなに泣いてるの?毒が痛くて仕方がないの?…私が代わりに行くって言えば蜜蜂先輩はそんな目に合わなくて済んだのに、わたしが喜んで代わりに苦しんだのに本当にごめんなさい。ごめんなさい。

あ、もう目が見えなくなってきちゃった。

死ぬのは怖いけど行った先に蟷螂さんと蝶蝶さんが待っていてくれてるなら大丈夫。怒られるのは嫌だけど、また会える嬉しさにきっとヘラヘラ笑っちゃってまた怒られるんだ。そしたら蜜蜂先輩も後でくるのかな、これでまた四人一緒ですねって…言って……


ああ、わたしもみんなと同じお墓に入りたい。

2014.03.22
久しぶりに四話を見返したら、この話が出来上がりました。もし、この任務に後輩として着いて行ったら一緒に殺されるんだろうなとこの最後に行き着きました。皆を殺されてまで逃げ帰るなんて出来なかった、それにもし情報を持って帰るとしたってそれは誰も勝てる事はない「無敵の姉がいる」という情報ただひとつ。ならば持って帰ったところでと思った夢主は飛び出しましたが待ってましたとばかりに一瞬で餌食になってしまいました。何が忍として正解なのか分からないけど、最後に皆と同じ時を過ごせて良かったと涙を流した、そんな女の子の話。
七花のお姉さんこわいこわい病に陥りました。
(comment*☆.)


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