■ 私の敬愛する先輩。(蝙蝠)
「ねぇ先輩、今日も行くんですよね!」
ああ、そーだぜと走り出したその黒い後ろ姿について行く事がわたしの日課だ。
獣組の頭領である蝙蝠さんは凄いの、口から苦無はだせるし体は変形させられるし優しいんだ。わたしもあーなりたいなーなんて常々思っている。
まぁ、蟷螂さんには止めろーだなんて言われているけど無視だね、え?虫なだけにって?いや…そういう意味で言ったわけじゃないけど、きっとここに蝙蝠さんが居たら面白くねー奴って言われるだろうから勿論意図的にと言っておこう。
「蝙蝠さん蝙蝠さんっ、今日は何をするんですか?」
「あ?ついてくりゃ分かるよ」
そうきゃはきゃは笑いながら枝を飛び移る姿は最高に格好が良い。
「わたしも蝙蝠さんみたいな忍になりたい」
「ん?なんか言った?」
枝を飛び移る音で聞こえなかったらしい。
いーえ!と大きな声で言えば急に足を止めしッと私の口の前に人差し指を突き出す。
見れば白鷺さんが枝にぶら下がりながら居眠りをしている。レアだ、こんな状態滅多に見れない。筆でささっと何かを描いている。ぶふーっ!声を立てず笑うそれはマブタに描かれたキラッキラの目。
(や、ヤバい…天才です蝙蝠さん)
そう目で訴えれば渡される筆、ドキドキしながらも書き上げたそれに一人でぬおおおおと感動していれば蝙蝠さんは親指を立て私たちはその場を離れた。
「ぎゃはぎゃは!いやーアレはねえだろ!起きたら絶対ねちっこく追い回されるぞお前っ、ぶふーッ」
口元を隠す布にはいびつな唇を、そして背中には逆立ちでこう書いた「頭がオカシイなんて言わないで☆」。
とりあえず逆さで喋る白鷺さんの変態っぷりには頭が上がらない為、思いつくのはこれくらいしかなかった。
「さ、どんどん行くぞー」
走り出す背中を追いかける。
どうしたらあんなに格好がよくなれるのだろうと考えていれば頬に枝が当たった、痛い。注意力に欠けていると以前こう言われた事がある、忍がそんなでは笑止千万な事ぐらい分かってる。
ちょいちょいと指差す先にはこれまた居眠りをしている蜜蜂くんがいた。
ここは蜜蜂くんが気に入っているひと休みエリア…前に確か連れてきて貰って自慢された事がある。ま、まさかっと蝙蝠さんを見ればにやりと口角を上げた。蜜蜂くんはやめた方がと言うが首を振られてしまった。
「ま、黙ってろって…つーかお前ここ血出てるぜ、やっぱお前って馬鹿だなどこぞの枝に引っ掛けちまったんだろ。まじ忍びとしてヤバいっつーの、きゃはきゃは」
わ、分かってますよっ忍として問題があるなんて事!と大袈裟に顔を反らせば口の中から大きな箱が出てきて消毒液やら軟膏、それに布や絆創膏などが入ってるのからして救急箱だこれ、この人意外にマメな人なんだとみていればあっという間に傷に消毒液をぶっかけられ軟膏を塗られ絆創膏を貼られた。
「あのな、女の子は顔こそ大事にしなきゃいけねーの分かる?だけどお前は俺様みたいな忍になりたいなんて毎日ご丁寧に言っちゃってやがるワケ」
だけど失敗、失敗。
大事な任務にはお前は参加出来ない。
任務では必ずと言っていいほど傷を作って返ってくる。
この泣き虫。
だから俺はお前を放って置けねーんだよ、そんな才能なしのお馬鹿さんは俺が一人前の忍になるまで育ててやるっつーのっ
「なんて、俺にしてはくせーかあ?きゃはきゃは!」
目に溜まった涙が落ちた、我慢していたから大粒のそれは音を立てて膝に落ちる。
「それに白鷺が気づかねえなんてすげー事なんだぜ、花子ちゃんよお」
「せ、せせせ、せんぱーい!!」
私は枝に腰をかけている事なんて忘れて勢いよく抱きついてしまった。うおおおお、なんて叫び声を聞きながら宙を浮く。まあ、気持ちいいものではない。
だけど、宙を浮いている時に先輩の胸の中に抱きしめられているのは少し、いや凄い嬉しかった。
−−−ガサガサッ!ズデン!!
「先輩っ、大丈夫ですか!」
「ってて、木から落ちんのなんていつぶりだよ。きゃはきゃは!」
その時、大きな影が私たちを覗きこんでいる。うん、これは紛れもなく。
「ごごごごごめんなさい、蜜蜂くん」
「きゃはきゃは!」
「貴方たちねえ…」
その面子と握られている筆を見れば一目瞭然ですが、なめてるんですか?忍ともあろう人達が大きな声で話してるわ枝から落ちるわなんなんですか、僕を侮辱しているとしか思えません。花子だけならまだしも蝙蝠さんも居てこうなりますか?こうなりますか?
そうまくしたてられた私は縮こまり、蝙蝠さんはこりゃ失敗だといつも通り笑う。
「さ、逃げるぞっ」
「あっ!まだ話は終わってませんよ!」
引かれた手が暖かい。
その黒い後ろ姿にいつもとは違うときめきを感じていた。
そう、これは紛れもない恋だ。
(何なんですか、ただイチャ付きに来ただけですか、ほんと…もう、ほんと…蟷螂さーん、うわああああん)
2012.09.10
アンケートから蝙蝠さんと悪戯したいと要望がいくつか見受けられましたので、息抜きに投下致しましたー(^ω^)
蜜蜂くんの同期の出来が悪い子って事で皆に愛されればいーよマジで。と思い書いた作品。
この裏では蟷螂さんや鳳凰さんや喰鮫さんになんやかんや世話をやかれてれば良いな、げへへ。
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