■ 君の為なら、其れもまた。(白鷺)
「貴方、一応頭領ですよね?」
私を木の上から見下ろすこの方は我が鳥組の頭領なのだが、正直とてもめんどくさい。
「…あなぇねれつ」
は?あな…?まぁ頭領に従うのが私等真庭のしきたりなのだが、正直言って良いですか。
「何言ってるか分かりません。」
鴛鴦さんの組みに入りたかったよ、何でこの人の下なんだ、指示がすげぇめんどくせぇんだよ。皆メモ片手に必死に解読しなきゃいけないし…さて、と素早くメモを取り出す。
「ねぇ、白鷺さん。今日非番ですよね?なんで私に着いて来るんです?」
「。ぇぜだんるてっやてし配心を事の花子てしと領頭もでレコ…よかのいなけ行ゃちきてい着」
(着いてきちゃ行けないのかよ…コレでも頭領として花子の事を心配してやってるんだぜぇ)
ふむふむ、心配だと?
「プライベートまで加入してくるんですか?頭領ってのは。」
むっ…と口を尖らせる様はまさに鳥組と言った所であろうか。白鷺さんは以外に素直で可愛い所もあるのだ。
まぁ、逆さ喋りってのが厄介なだけで後はとても面倒見がよく良い人なので私は好感を持っている。他の組の者もきっとそうだからこの人の元に着いているのだろうな。
「、よてっだ」
言葉を詰まらせる白鷺さんなんて珍しい。どうしたんですか?と私が問うと、苦笑いで頬を掻く。
「?かのぇねゃじんくいに所の蝠蝙らか今」
(今から蝙蝠の所にいくんじゃねぇのか)
まぁ、そうなのだが何か問題でも?と顔を上げ怪訝に眉を潜める。だって、忍法を教わるんだもの。
白鷺さんの様に周りに一目置かれる忍者になりたいんだもの。
私は白鷺さんに次の任務で褒めて貰いたく、自主練を兼ねて蝙蝠さんにお願いしたのだ。
「まぁそんな所です。てゆうか誰からの情報なんですか、それ。」
聞くと蝙蝠さんが虫組にきゃはきゃは触れ回ったらしく、自慢されたのだと蝶蝶さんが機嫌を悪くして白鷺さんに話されたのだという。
なぜ自慢。蝙蝠さんだから自慢に聞こえてしまったのかな。あれ、白鷺さん木に足掛けてぶら下がってる。
「なに遊んでんですか。私そろそろ行きますよ?」
理由がなんにせよ、十二頭領を待たせるのは流石に不味いだろう。
「そういう事は俺に言え」
耳を疑った。ナニカイイマシタカ?
もう一度言って下さいと言うと横に顔を背け大きな声を出す。耳が赤いのは気のせいだろうか、髪も肌も白いのでやけに目立つ。が、それどころではない。
「二度も言わせるな!そういう事は俺に聞けと言ったんだ!」
「貴方、普通に喋れんですか?」
だったら普通に喋れよと毒を吐くと、それじゃ逆さ喋りの白鷺ではなく何の特徴もなくなるとか何とか反発してくる。
「逆さになっている」
「ああ、そういう事ね。」
しんと静まった中、頭に血が登ってきたのかグルンと回り木の上に座る。あーあ、またメモ取らなきゃじゃん。
「白鷺さんに驚いて欲しかったんですよ」
後、たまには褒めて欲しいんです。と、最後に本心を呟く。
「か為の俺」
首を傾け、心中を探るように私の顔をまじまじと見つめてくる。やめてくれ、化粧は崩れていないだろうかとヒヤヒヤする。ヒヤヒヤ…?何故そんな事をと疑問に思っていると顔が熱くなる。
「だ目駄更尚あゃじ」
メモを取り忘れ、え?と横の木の上にいる白鷺さんの方を向くと、そこに座ってはいなくぶら下がり私の顔の目の前に白鷺さんの黄色い目がうつった。
わわっと慌てるヒマもなく白鷺さんが口を開く。
「嫁に来てくれ。」
えー!!な、な、な、な、な、何をとガタガタ震え後退りする私の腕を捕まえニタリと口角をあげる。あば、あば、となにを口にしたら良いのか分からない私はきっと腕までが赤くなっている事だろう。こんな事で狼狽えるなんて忍者失格だ。
「蝶蝶殿も鴛鴦殿と好き合っているのだと」
手を離しグルンと木に座り直し、私の目の前に降り立つ。
「ろだいい、ぜだんなき好」
ああ、この人は。
何処まで逆さ喋りが好きなんだろう、それをプロポーズの後に言うなんて。
その言葉をメモを取らずに解読出来た私も末期なのだろうなぁ。
____________
「逆さ喋りを止めて下さったら考えてあげます。」
「?かとこてっろし動行てしち立逆」
君の為なら、それもまた。
逆さ喋りの白鷺→逆立ちの白鷺ですね。
[ prev /
next ]