■ そこ退け、そこ退け。(赤鳥+不忍+白侍)
「ふざけた事を抜かすな忍者風情が」
「出そうだぞ右衛門左衛門。人の嫁に手を出すなど極めて人の道から外れている、そうは思わないか?」
「不譲(ゆずらず)、自意識過剰も大概にしろ」
いやいやいや、私はこの先のお団子屋に用があるのだけれど…退いてくれないでしょうか。というか、町中でこんなにも派手派手しい方々が揃って言い争いをしていれば目を引くのも無理はない。
「ちょ、御三人方、少しは人目を気にしては」
おろおろするも言い争いは止まらない、いや、不止(とまらず)と言った所であろうか。
良く考えて頂きたいものだ、白兵さんは置いて考えても他二人は三十代。
「良い大人の方がそれでは…」
それに食いついたのは、錆。
「ふっ、まったく花子殿の言うとおりでござるな、年齢を少しは考えてはどうだ?」
はんっと息を吐き、やれやれと言った様子で三十代を見下ろす姿はまさに圧巻。
その先にはその言葉に苛々とする禍々しい気が身体から湧き出ている人間が二人。気のせいですか?いや、気のせいじゃない。周りの町人は先程より明らかに視線を避けて通っているじゃないか。
「くくく、ではこうしようか堕剣士よ」
鳳凰は人差し指を立てる。
「何方にせよ、選ぶのは花子殿。選んで貰おうではないか、この内の一人を」
その空に向かって伸びた指の先はすっと私の方を向く。
「そうだな、元より花子殿が決めれば済む事であった。して答えを聞こう」
不忍の面はずいずいと歩み寄る。す、凄い目ヂカラ…は無いのだが、怖い。叫べば誰か助けてくれるだろうか。否、それは絶対ない。
「無論、拙者に決まっている」
「いや、私だ」「我だ」とまたまた言い争いに勃発だ。この大人達は。
「私は…大人な対応の方が好きです」
ぴたり、その言葉に動きを止めた三人はいつもの余裕の表情を見せる。さらりと髪を揺らす錆、ふふんと不敵な笑みを浮かべる鳳凰、手袋をはめ直す左右田、今やこの三人の雰囲気は町娘の心を射抜いている。
この顔を見よ、と言わんばかりである。
とがめに言わせれば、どうだ?私こそ大人の中の大人。そうであろう?と言った感じだ。
「あ、あのう…そろそろ団子を…」
分かっている、と手を取る不忍。
「不及、花子殿が好いていると聞き私が用意した。さて、残った時間で何をしようか花子殿」
にやにやと歪めれるその口元はちらりと赤い舌が酷く似合う。私が大人な遊びを教えて差し上げようかと顔を寄せる左右田をすかさず錆が阻止。はぁ?と言わんばかりの眉の潜めようである。
「邪な考えが見え透いているぞ、不忍。花子殿、そこの卑しい男の手を離すでござる」
ふともう片方の手を取られ、それまた口元へ。
「拙者よりも花子殿を好いている者などいる訳がない…この際、お返事を。」
儚げな表情にびくりとする、伏せられたまつ毛が長く美しい。しかし、拙者以外でも諦めないがなと口元を緩め口を付ける。私はがくがくだ、主に膝がですが。
「至極不愉快、我のものに気安く触るな…と言いたい所ではあるがこの際そんなものはどうでも良い、か」
両手が塞がれている事は我にとっては好都合。そう言った真庭の頭領は抵抗なしのその唇を簡単に奪う。あんぐり口を開ける二人をむざむざと利用したのだ。
私は放された手を口に当てる、してやられました。
私の手が届かぬ数歩離れた位置に移動した彼は続いてこう話す。知っているか?と。
「花子殿の唇を奪ったのは過去数回私だけ、彼女の肌の柔らかさを知っているのもな。いや、許されているのも、であった」
顔を抑えうずくまる。恥ずかしがる事はないと言われるが私は穴に入りたい気持ちで一杯だ。顔が熱い。
ぶつぶつ刀を抜く錆に続き、不忍は二本既に赤い鳥に向けて振りかぶっている。
「愛し愛されている、くくく、不毛な戦いとはこの事だな」
ぶんぶん刀を振られそれを楽しそうに避ける鳳凰、ああ、銀閣さんにすれば良かったかな。
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「不認(みとめず)、とりあえずお前は死すべき存在である事に代わりは無い。人の恋路を邪魔する者は…死あるべし」
「…花子殿の、花子殿の…くそっ拙者が貰い受ける筈でござったっ、拙者にときめいて貰うでござる………!!」
イノリ様からリクエスト頂いた『錆と鳳凰(出来れば+不忍)に挟まれて、あたふたひやひやする一刀両断連載主』 を書かせて頂きました。アニメ放映終了。悲しいですね、とても。不忍のキャラはどういこうかと試行錯誤しましたが姫様に対してとは別の大人なエロさで主人公を攻めて攻めて攻め倒して出していこうかなと。
読んで頂きありがとうございました。
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