■ 愛を囁いて。(銀閣)
俺には勿体無い、とびきり良い女。
そんな花子を俺は突き放した、突き放したつもりだった。
衣服を破る音と歪む花子の顔に自分自身にこの原因である刀を突き刺したくなるほどの後悔が襲う。
無理矢理犯せば、俺の好きな団栗のような大きな瞳からぼろぼろと涙が零れる。
目を逸らし濡れてもいないそこへ突き刺し、只々揺さぶった。一見感情のないその行為にお前はどう思ったのだろうか。
俺はこんなことがしたかったのか。
いや、仕方がなかった。これしか…
刺客がこの刀を狙っている以上お前を近くに置けない。違う女を抱いている際に刺客が来て巻き添えになり死んだ。
ああ、花子でなくて良かったと思ったのだ。俺は気づいたあれこそ俺が大切な女なのだと。他の女など幾ら犠牲になってもいい、刀を守る為ならば。
しかし、お前だけは駄目だ。
駄目なんだ。
自分だけ着物を整えいつもの所へ座る、この四畳半の俺の居場所。
話しかけもしない。ただ俺はいつものように目を瞑りそこへ腰かけるだけ、ぐすぐずとしゃくりをあげる花子に今すぐ手を伸ばし抱き締めて謝罪とこのお前に対する想いを伝えてしまいたい、しかし今それを口にしたなら俺の花子にした仕打ちの意味はなんだと奥歯をぎしりと噛み締め耐える。
耐える。
そうだ、泣け。酷い事をした俺を憎み嫌え。
「もう、ここへは来るな」
衣擦れの音で花子はだけた着物をよろける身体で直しているのが分かった。早く、早くと俺の気持ちが昂ぶるのを必死に抑えた。
「や…」
「斬られたいか」
「嫌だ…斬られても良い」
だから、とよろよろと此方に近づき俺に覆いかぶさる花子に何を考えているのか唖然とした。
「な、何を言ってるのか分かっているのか」
身体から離れた花子はいつもの花の様な笑顔で俺を許した。
「貴方の傍で死ねるなら本望、好きよ銀閣」
ああ、この頬に流れるものはなんだ。俺は知らない。花子がくすりと笑い頬に伝う涙を撫ぜた。
「すまない、」
ここから出る事を許されない俺を、お前を娼婦の様に扱った俺を許してくれるのか。俺は頭を抱えた、どうしらならばこの女を幸せにできる。俺には勿体無いくらいの、出来た女を。
「銀閣、貴方の気持ちは分かっていたつもりよ。私は貴方さえ居てくれればそれでいいわ」
そうだ、俺はこの女を世界で一番…
「愛している」
やっと言えた。辛い思いを幾度もさせ、酷い事をした俺を許したこの女を生涯守り通したい。この命に変えてでも。
「何か、俺にできる事はないか」
花子は横に座り俺の手を取り顔を覗き込んだ。
「では、抱き直して下さいな」
「その愛を囁いて、もう一度」
お前が望むのなら幾らでも。
此れからは飽きるほどお前を抱き愛を囁き、生きていこう。
「ああ、勿論だ」
この命に変えてでも俺はお前を守り通すと誓おう。
_______________
銀閣さんが好きな貴方へ、アンケート要望がありましたので(^O^)
しかし、少し酷くなりました。すみません。
ゲームで言う所のルート1ですね、しかしちゃんとハッピーエンドですよ!!
こんな銀閣さんの生き方もいいのではないかなと思いました。
ありがとうございました。
[
prev /
next ]