視線の先に。

「ふーじー!早くしないと授業間に合わないってば!」


僕は移動教室の移動中、渡り廊下から見える教室の窓から外を見ている女の子に目を奪われた。

あれ、今…目が合ったような気がしたんだけど。ふいと教室に先生が入ってきたのだろうか顔を前に向ける。

「ごめんって、英二。ねぇ、あの席の子誰か知ってる?」

「どれどれー、んー…」

僕の指先を辿る英二はああ!と声を出しあの子、可愛いよねぇ。よく男子テニス部見学来てるよと言った。

「ふーん…」

知らなかったな、今日も来るんだろうかなんて考えていたら英二に遅刻すると腕を掴まれ走らされた。

放課後、練習の為テニスコートにいるとつい見回してしまう。

「今日の不二先輩、挙動不審じゃないすか」

なんて、越前の声が聴こえてしまうくらいに彼女の事が気になっていた。

「いた…」

三年の顔は皆知っている筈なのだがと思い二年に声を掛け聞いてみると思わぬ収穫があった。

「あー、あいつこんなとこで何してんすかね。うちのクラスの山田花子っすよ。」

おーい!と桃が声を掛けると驚き慌てて逃げてしまった。

「桃の応援かな?」

「それはないっす!だってあいつ…確か…ってやべぇ!グリップ変えてこねぇと、すんません不二先輩。」


確か?そそくさと部室に戻る桃に手を振りレギュラーの試合をフェンス越しで見ている手塚の横に立った。

部活は部活できちんとしないとな、と試合を眺めていると突然手塚がこっちを向いて「何かあったか?」なんて言ったものだから少し可笑しくて笑った。

「そんなに挙動不審?」

「俺が見る分にはな」




翌日、三時限目の現国の時間、僕はグラウンドで体育が行われているのを窓から見ていた。

あ、桃だ。て事は、ああ居た。風に髪をなびかせ友達とストレッチをしている。

桃と仲が良いのか口喧嘩を始めたみたいだった。つい面白くて笑ってしまう。桃から怒って離れていく彼女は不意に此処を見た気がした。また目が合った気がしたんだけど…勘違いかな。もしかしたら違う教室や学校全体、もしくは学校の時計を見ていたのかもしれないと考えていると先生にさされてしまった。
黒板を見て答えを言うと言葉を詰まらせた先生がいた。


それからと言うもの、毎日色々な所で目が合うようになった。たまに手を降ってみると顔を赤くして固まっていたのが面白くて吹き出してしまった。



そんな事を繰り返して早一ヶ月。
あまり顔を見せに来なくなった部活の時間、また彼女を見かけた僕は給水に行ってくるとコートを後にする。

「山田さん。」

ピタリと止まるが此方を見ようとしない彼女はそのまま答えた。

「な、何で名前…」

「山田花子さんでしょ?」

そんな声をしていたんだね。初めて聞いた声は高く女の子らしいもので君が近くにいると実感させてくれる。

「桃から聞いた。…最近、よく目が合うよね。」

違う、それは僕が見ているからだ。

「あ、あの不二先輩っ…」

振り返った彼女は顔を真っ赤に染め口をはくはくさせていた。

「こうして真正面から話すのは初めてなのに、初めてじゃないみたいだよね」

近づく僕にわたわたと慌てる彼女もまた可愛くて、面白くてクスリと笑ってしまう。

「からかってるんですか…」

俯いてしまう君は何だか小さく見えて、手を伸ばしたくなった。



「ごめん、君が好きだよ」

いきなり顔を上げた彼女は真っ赤な顔に手をあて「わ、わわたしもずっと好きでした」と返して後ろを向いて逃げ出してしまった。




「連絡先、聞き忘れちゃったな…」


______________

-後日談-


「不二先輩、花子と付き合ったって本当っすか!?」

「うん、そうだけど。どうかした?」

「俺、てっきりあいつの妄想かと」


前に羽倉かした確かの後を桃に問いただすと「確かあいつ、不二先輩のファンっすよ」と言おうとしたのだと言う。
言ったらブン殴られますからーはははと笑う桃に、仲が良いんだねと少し嫉妬してしまう僕がいた。




アンケートから不二先輩の魔王要素をとった夢とかかれていたので!
ファンクラブの願いを優しい不二先輩で、叶えてみましたが少し長くなってしまった。今度は同級生夢を書いてみます(^O^)






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