■ 03話/嘘か誠か。
本当だろうか、町を離れその足でこの顔がパンパンに腫れた名を、確か花房と言ったかその小さい男の歩く後ろを着いていく。
途中で、スキありー!!と刀で切りかかって来たので回し蹴りを喰らわしてやった。地面に顔がめりこんだ。それ以来、声を掛けると若干身体がビクつく。まぁ、静かになったから良しとしようか。
「ねぇ、まだ?」
あたしの問いにまた肩をビクリと揺らして返事をし、此方をそろりと見る。
「その店の名前も聞いてないし、どんな所なのよ」
はぁ、と何やら言いにくそうにしたと思ったら、いきなり走り出した。
「あっあんた!また!」
逃げようと…と言いかけた所で大きなお屋敷であろうか、外壁に囲まれた敷地の門を指差した。
「ここです!ここ!!」
さぁ、入りましょう!と先に入る花房を少し疑いながら門の入り口で立ち止まる。こんな大きいお屋敷がそうなの?
「…忍術学園。」
学園という事はここは勉学の学び舎と言う事か…しかも、忍だと?
「ほらぁ、何やってんですか」と手を引っ張られ中に入るとあたしよりも年が幾つか上の男が台紙を渡してくる。へ?と返せば、入門表でーす。名前書いてねー、と事務員の名札を付けたお兄さんがふにゃりと笑った。
「あ…あたしの名前…ですよね。」
昔、親から自分の名前だけは書けるようにと習ったことがある。
少しぎこちない字で山田 花子と書き、はいっと渡すと満足気に仕事に戻って行った。少し歩いたところでパッと振り返ったので何を言うかと思ったら「帰る時には出門表にサインしてってねぇー」と手を振ってきた。
呑気な人、と私も笑いながら手を振り替す。先程から凄い急かしてくる花房に手を引かれ門を後にした。
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広くて本当お屋敷って感じ、でも学園なのね…と歩いて行くと子供達がこちらを見てヒソヒソと噂している。
やっぱり、この男部外者なんじゃ…
「ねぇ、あんた本当にこの学び舎の知り合いなの。」
「は、はい!知り合いは勿論、ライバルの剣豪も居ますよ!」
時々、ご飯も食べに来てます、がははと笑うこの姿に嫌な予感がした。
この性格の男に果たして友達がいるのだろうか。
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