■ 35話/けまけましい。

ふとした時にあの時の花子の赤くなった顔を思い出してしまう。
伏せられた睫毛に赤い頬、まじまじと見たことがなかったが実は可愛…

「め…留さーんっ」

「ああ、どうした?」

そう言えば、飯を食べに食堂に来ていたんだった。そう、気づけばふと考えてしまっている。おかしい、おかしいおかしい、これじゃまるで俺が!!

「留さん、お箸」

「あ…」

折れてしまった…

「ほーら、花子さんに謝って新しい箸を貰って来なよ」

「え!いや、うん、そうだな…」

伊作の方を見れば気味の悪い笑顔を浮かべているしろくなこと考えてねぇ。平常心、平常心、だ。
それに向こうは前のことなんて気にしてないに決まってる。こっちが気にし過ぎなんだ。

「花子さん、すまんが箸を折ってしまって…うっ」

「はいはいお箸ね〜」

やばい、俺は視力がどうにかしてしまったのかもしれない…か、か、かわいい。

「はい、新しいお箸」

「あ、ああ、サンキュ…き!今日は天気がいいな!!」

「あ、うん、そうだね。洗濯日和で毎日こんなだと助かるんだけどね」

な、な、なななななんだこの会話は!!近所のおばちゃん達の会話じゃねぇーか!!!声も裏返っちまったし、駄目だ、羞恥に溺れそうだ。低学年の目が痛い。そうだ、どこの誰かじゃないが鍛錬だ、こういう時ほど身を鍛え直そう。

「すまん、花子さん、俺は鍛錬し直す」

「え?でも食満くん…」

「止めないでくれ、今の俺には必要なんだ」

さらば、と身を翻せば後ろには食堂のおばちゃんが。ああそうか、花子さんが言葉を濁したのはこういう事だったのか。俺はこの学園に6年いたと言うのにこの言葉を忘れていた。

「お残しは許しまへんでぇぇぇ」

「ひっ!!」

やはり俺には鍛錬が必要だ。
待っていてくれ、まずは目の前にある定食を残さず食べ花子さんにご馳走様を言って「お粗末さまっ」と言う花が飛ぶような笑顔を貰おう。

「留さんさ」

「なんだ伊作、今忙しいんだ」

「さっきから心の声がダダ漏れなんだ、ぶふーっ」

「なっ、伊作っ!!」

「留さっ…ブッ…顔真っ赤!!あはは!」

顔を真っ赤にしながら笑う伊作を見ている俺も負けず劣らずの茹で蛸ぶりだろう。

「恋をすると人は変わるね留さん」

人差し指で涙を拭う伊作はまだ笑いがおさまらないようだ。


(とりあえず落ち着いてくれ、頼む)



(comment*☆.)


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