■ 25話/亡霊背負ってません。
「利吉くん、どうしたんだい花子さんは」
「いえ、知りません」
まさか子連れだとは…利吉くんがそれしか話してくれなかったけれど嘘を言っているようにはみえなかった。
そうだよねー、最初から思っていけれどこんなに格好がいい男の人が独身な訳がないじゃないか。分かっていた事だ。何をそんなに衝撃を受けているんだあたしは。
「…ん…花子ちゃーん」
「…はい?」
振り向けば利吉くんと土井先生がおーいと手を振っている。え?あれ?と見ればもう学園の門の前を過ぎていた。
あちゃー。
とりあえず、学園長先生に頼まれた物を渡しに行かなければと二人に別れを告げれば利吉くんが耳元でまた後でというものだから手に持っていた包みで殴ってやろうと思い切り振ったがあっさり避けられてしまった。そうか利吉くんも忍者なんだった。くそっ、むかつく。
「残念、では私は父上の元へ行かなければ行けないので失礼します」
「……ああ」
耳が痒いと気にしていればふと視線を感じてそちらを向けば土井先生が少し眉にシワを寄せていた。
「仲が宜しいんですね」
え?いや、そう見えますか?もう明らかに弄られているだけじゃないですか。あんな奴、付き合ったらすぐ飽きてポイするタイプですよ絶対!!
あたしは全然宜しくないですッと狼狽えてそれを言葉にした。だって土井先生がそんな目で見るんだもの。
「利吉くんと歳も近いですし何かと気が合うのかもしれませんね」
そう告げて背中を見せた土井先生を見て、胸がキシキシした。
(どうしたいんだろう、あたし)
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