■ 22話/このうどん味がしない。
「あれ?土井先生じゃないですか」
「やあ、利吉くんじゃないか」
え?私は土井先生を見上げる。
ちらりと若者を見ればやはりイケメン、類は友を呼ぶとはこの事かと一人遠くを見ながら感心していると視線を感じた。目の前の若者だ。
なに見てんだよ、なんて言えない。
「な、なにか?」
「利吉くん、この人が新しい食堂のお姐さんの花子さんだ」
ああ、ウワサの!なんて納得された。一体どんなウワサが立っているのか、きっと変なものだろうから別に聞きたくもない。
「初めまして山田 花子です」
お辞儀をすれば返ってくるそれ。顔が良い人は大体性格悪いって言われているけど嘘なのかもしれない。学園に来てからほんとそう思う。
「山田 利吉です、よろしくね」
山田…なんか何処となく…
「利吉くんは山田先生の息子さんなんですよ」
ぎゃおおおお、や やはり!目元が何処となく山田先生に似てると思ったんだ。やっぱり!うわーどうりで。
「格好いい筈ですね」
「え?」
へ?
「わわわ、口に出てた!そうじゃなくてですね、いやそうじゃないって言うのも変なんですけど…ごごごめんなさいっ!!」
土井先生がはあ?みたいな顔してこっちを向くわけだああああ、くそう恥ずかしい。恥ずかしい、ほんと穴があったら入りたい。
わたわた慌てて弁解をすれば、ぷっと笑う声が聞こえる。見れば利吉さんが腹を抑えて笑っていた。
「あははっ、面白い方ですね。土井先生」
「…あ、ああ。だろう?面白いんだ」
そんなに笑わなくても。
そう思ったけど私も利吉さんと一緒になんとなく笑っといた。
さっきの恥ずかしさがまだ残っていたから。
「うどん、食べに来たんでしょう?ご一緒しても良いですか?」
「え、私は別に」
土井先生が良ければと繋げるとじゃあと笑顔で暖簾をくぐる利吉さん。ねえ、貴方いま土井先生に聞きましたか?後ろを向けば土井先生が苦笑いをした。
そんなお顔も素敵です。
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