■ 21話/るんるんるんっ!
うはぁ!うはあ!
あたしの隣を土井先生が歩いている、いつも見ている草木や花が今日はキラキラ輝いて見えるよ。身長高いなあ。
「どうかしましたか?」
「えっ!!」
いやあ、ははは。と笑って誤魔化した、調子に乗って見過ぎていたかもしれない。それかなんか変な笑いとかも洩れていたかもしれない。何方にせよ恥ずかしい。
「今日は…何だかいつもと違いますね」
「え?えっ?」
に、二回も聞いてしまった。土井先生はあたしの挙動不審な態度をくすくす笑っている。そんな、笑わなくても…
「その私服、とても似合っていると思いまして…いやっ深い意味はないんですがっ」
シナさんありがとう!!!!
私は少し照れて俯いた。着てよかった、着てみて良かった。やっぱいつものにしよ、とか振り返らなくてよかった!!
「…ありがとうございます」
「……あっ、ほら町ですよ」
賑わう街並みは前となんら変わらない。顔見知りが多く、行く先々で声を掛けられるのが少し気まずかった。
土井先生には入り口で別れを言ったのだが"町を見て回るだけですし、帰りも危ないので"と言われてしまい今に至る。
嫌なわけでは無い、嫌な訳ないじゃないか!
「おっ、花子ちゃん久しぶりじゃないか!隣の人は花子ちゃんの良い人かい?」
「おじさん、怒りますよ」
これだ。予想は付いていた、だから入り口で別れを切り出したのに。良い人な訳ないじゃないですかああ、この方があたしと一緒になってくれるんなら天と地がひっくり返りますよ、こんな結婚適齢期も過ぎて女っ気もないあたしなんかね。
「土井先生、ほんとすいません」
「いっいや、気にしないで下さい!」
ほらこの隣のイケメンを見て下さいよ、おじさん。こんなに顔を赤くして…って赤くして!?おおおおじさん、なにしたんですか!?土井先生に何かあったらまた学園から間者として私が殺されてしまう!!
あたしは慌てて、おじさんの肩を揺する。
「土井先生っ、ごめんなさい、ごめんなさい、おじさんも謝ってよ!こんな格好良い人があたしの良い人になんてなってくれる筈がないじゃない!!」
「えっ!ごめんよっ、お似合いだと思ったんだがなあっ」
おおおお似合いだと!?顔が熱くなる、おじさん好きだ、お世辞でも嬉し過ぎる、あたしはおじさんの肩を揺すりながら何も喋らない土井先生をバッと見た。
汗をたらたらかきながら耳を赤くして俯く彼にあたしも真っ赤になった、否定して下さっても構わないのに。
目的の学園長先生とヘムヘムのお饅頭も買うことが出来たが少々気まずくなった。
丁度、お昼時になりこれまた入ろうとした所が知り合いのうどん屋さん。ここのおじさんとは花房の食い逃げの時以来だなぁ。暖簾をくぐろうとすると若い男の人の声に声を掛けられた。
「あれ?土井先生じゃないですか」
またまたイケメン現る。
[
prev /
next ]