■ 20話/棚からぼた餅。
目を閉じ襲う衝撃に身を構えていたもののいつまでたっても訪れない。目を開くとあたしは目の前の大きな背中に守られていた。
「まったく、小松田くんも無理して沢山持つのはやめなさい!」
「ふぇ〜、土井先生」
小松田くんは申し訳なさそうにぴーぴー泣いていた。しかし、今回は自業自得、頭が隠れるほどあんなに荷物を抱えていて生徒とぶつかったらどうするつもりだったのか。土井先生、キツく叱ってやって下さいよ。
「花子さんも、」
「え、あたしも?」
「危ないと思ったら逃げて下さい!支えようとしてましたよね!?」
ちゃんと見られていたのか。まずい、おしとかやで通すつもりだったのに!!
「す、すいません、つい」
「つい、で怪我したらどうするんですか!」
ごめんなさい、ごめんなさいと必死に謝る。土井先生に怒られてしまうなんて、う、涙が溜まってきた。小松田くんもあわあわしている、お前のせいだぞっ、帰ってきたら肩もませたるっ。
「ごめんなさい…」
「もう良いです」
え、それって愛想が尽きたって事か、呆れてものも言えないとか?うう…
「ごめんなさいはさっきも何回も聞きました」
プイと顔を背けちらりと此方の様子を窺う。もしかして…
「あっ、土井先生、助けてくれてありがとうございました」
「はいっ」
私がお礼を言うと授業中も子供たちにも向けるのであろう「うむ、よろしい」とでも言いそうな満足気な顔で微笑んだ。
「うわぁん、土井先生、ありがとうございましたぁぁ、花子ちゃんごめんねぇ〜」
「ほらほら、もう分かったから泣かない」
困った顔した土井先生にいーこいーこ撫で撫でして貰う小松田秀作に殺意が湧いた。
((小松田…てめぇ……))
「あれ、そういえば花子ちゃんも土井先生も私服で何処か行かれるんですか?」
え、と互いに顔を見合わせる。
さっきまで切羽詰まっていて気付かなかったけど、うわぁ、土井先生の私服なんて見るの初めてだよぉ、生きてて良かったぁ。
「私は少し生徒の復習の下見に町へ」
「あたしは学園長先生のお使いに町へ」
「ふーん、そうなんですかぁ!なら二人で楽しんで来てくださいね〜」
何故、今の文面でそうなる!?と突っ込んでやりたかったが土井先生が此方を向いた愛想笑いされてお先に失礼しますって言うに決まってんだろぉ、小松田ぁぁぁ。
「はは、では行きましょうか」
「はい……え?」
((前言撤回、小松田くんお土産買ってくるね))
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