■ 19話/買い物に行きましょう。

学園長先生に呼ばれた。


「シナ先生から聞いたぞ、何も持って来ていないとな?」

うわー、この人にも言ってしまったのかシナさんは。心配するに決まってるのに、ほらほら!懐から何か出したよ!

「ちょっとお待ちください、なに不自由して居りませんので!」

目をパチクリさせる学園長先生を止める。住居を頂き、働く所も貰い、充分なのだ。もう何もいらない。

「そうか…分かった。」

胸を撫で下ろすと、障子が開きヘムヘムがお茶を持って来てくれた。

「ありがとう」

ヘムヘムとは仲が良い、この学園で働く先輩として良く仕事の合間に調理場に顔を出してくれるのだ。

ヘムヘムは笑いながら学園長先生の隣に腰を落ち着かせた。

「しかし、お主が作る飯もうまいのう!なぁ、ヘムヘムよ」

「いやいや、おばちゃんには及ばずまだ半人前で…お恥ずかしいです」

ほんとほんとと笑う二人に褒められ顔が熱くなる。おばちゃんから色々教わり今では調理の仕込みと一品任されているけれど、洋食には慣れずまだまだだと自分でも思う。

「これで黒古毛 般蔵先生の忍者食を食わなくてすむわい」

黒コゲ?なんだその名前の先生、いたか?でも、そこまで褒められると歯がゆいなぁ。もう、帰ってもいいだろうか。

「与えられた仕事、一生懸命頑張りますので。では、この辺で」

「ヘムヘム!」

これまで黙っていたヘムヘムが突然声を上げたので驚いていると、学園長先生が懐からがま口を出した。

「食堂のお姐さんに、お願いがあるのじゃが」

お願いとあらば断る訳にもいくまい。あたしは何でしょう、と聞く。

「儂に町の饅頭を買って来てくれまいか。ヘムヘムと一緒に甘いもんが食べたいと話しておってなぁ」

「ヘムヘム!」

さっき声を出したのはこの事だったのか。分かりましたと小銭入れを受け取り個数を聞き立ち上がる。

「残りは駄賃じゃ、給料まで色々それで買いなさい」

「え!?いや、そんな訳には…」

「学園長命令じゃ!早く買って来い!」

ヘムヘムに背中を押され襖の外に追いやられ振り返ると学園長先生と一緒に手を振っていた。

有無を言わせぬその笑顔に一応頭を下げてお礼を言い、後にした。





「あれ?花子ちゃん出かけるの?」

せっせと荷物を運んでいる小松田くんに駆け寄る。顔が隠れるほど荷物を抱えているからだ。小松田くんの事だから絶対転けてしまうだろう。

「き、気をつけてね、小松田くん」

「大丈夫っ大丈夫…ってわぁ!」


ぐらりと大きな荷物が私に傾き落ちてくる。
力に地震があったあたしは抱えるポーズをしたものの怖くて目を閉じてしまった。
や、やばい……あれ?

落ちてこない…とそっと目を開ける。



「……ふぅ…間に合った」




救世主登場。


(comment*☆.)


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