■ 15話/隣人とハプニング。
部屋に着く最中、中庭は忍たまの子がよく蛸壺と言う落とし穴を掘っているから気をつけるのよと教えて貰った。
しかし、どう気を付ければ良いのか分からない私は余り一人で中庭には入らない様にしようと思う。
教員の長屋はやはり静かで人の気配すら余り感じなかった。
遠くではガヤガヤと話し声が聞こえるあたりそこには生徒達がいるのだろう。
「これから色々あると思うわ、何かあったら私に頼ってね」
私はシナさんが大好きだ。
むしろ、もうあちら側に行ってしまおうかなんて考えていると部屋に着いてしまった。
「少し待っていて頂戴な」
特に中でする事もなかったので縁側に腰を掛け、月見をする。満月でもなく、ただの三日月なのだがあたしはどんな月でも大好きだ。星も月も、涼しい風も大好き…ん?今何か動かなかったか?
がさりと草の茂みが揺れた。
ほら、また。
ガサガサと音を立て茂みから出て来たものに私は硬直した。いや、これは動いちゃいけないと体が判断してる、絶対。
その時、朝方聞いた事のある声がした。
「あー!食堂のお姐さんになった娘だよねぇ、確か部屋が隣って…」
私は咄嗟に判断した。この先輩に何とかして貰おうと。だって、少なくとも学園には私よりも長く滞在している訳だし、対処法を知っているはずだ。
「こここここ小松田さん…」
ちょいちょいと手招きで呼んだ小松田を盾にした。いきなりの事で驚かせてしまっただろうか、あたしもだ。
「ちょ、ちょっとどうしたの?」
「あああそこっ、小松田さんあそこ」
指差す先にはいかにも私毒持ってますといった赤色をした蛇が此方に向かって舌を出しては閉まってを繰り返していた。
「わぁっ!た、大変だぁ」
え、この人忍者じゃないの?
はわわわ、と慌てている小松田さんに呆気に取られる。
「あれは確か三年生の伊賀崎孫兵くんが飼っている毒蛇だよ、よく逃げ出すとは聞いてたけど」
どうしようと逆に聞かれた。とりあえず背中に隠れ蛇の様子を伺う。密着してはいるがこれは事件だ身を守る為には仕方が無い。
「何を、されているんですか?」
こここの声はぁ!私はその救世主様の声に勢い良く振り返る、もう嬉し過ぎて涙が出て来そう。しかし、私と小松田さんの姿を見て気まずそうに目を逸らされてしまった。
「ど、土井先生?」
「すみません、…お邪魔でしたか?」
私は床に膝をつき、崩れ落ちそうになったがそれどころではなかった。あれを、あれを見て下さいとやっとの思いで指を差した。
「あ!あれは!」
サッと素早く捕まえてくれた姿に惚れた。惚れ直した、いや直すと言うのは間違えだ。もう私、骨抜き。
「二人とも無事で良かった、生徒に強く注意して置きますので」
その場から去った土井先生にまだポケーっとしていると先に小松田くんが話し出した。
「僕もあんな風になりたいなぁ」
つもる話がありそうだったので縁側に座って二人で談笑をした。本当に普通の青年であたしは好感しか湧かなかった。仕事でいつも失敗ばかりだと言う。暇が出来たら事務室にお茶を持って行ってあげると約束をした。呼び方もお姐さんから花子ちゃんになったし、あたしも小松田くんにした。年も近いようだし、たまにはこうして月見をして談笑しようと笑った。
「これからよろしくね」
小松田くんとは仲良くなれそうで嬉しかった。
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「ごめんなさいね、あら?何かあったの?」
遅かったですね、本当色々あって疲れました。土井先生は小松田くんの隣の隣らしい、聞いてしまい後悔した。多分、シナさんにバレた。
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