■ 14話/なんだがホクホクする。
それからようやく片付けが終わり、ひと息ついているとおばちゃんが置くからお茶を持って来てくれた。あたしはこんなに疲れているのに、毎日この仕事をしているおばちゃんはとても元気で驚いた。
「あら、大丈夫?きっと疲れたのね」
「情けないです」
お茶をことりと机の上に置き、仕方ないわよと微笑む。
「初日で色々な人と会ったんだもの」
まさか学園にあんなに忍者の生徒がいるとは思わなかった。忍者のたまご、略して忍たまだとか。可愛いなぁ。
そういえば、くの一教室もあって女の子たちもいた。皆可愛らしくていかにも女の子って感じがした。本当に羨ましい。
自身の姿を見返すと、畑仕事をした後に花房牧之介に絡まれここに来たものだから着物もボロボロ、先ほど水を張った桶に顔をうつせば頬に泥まで付いていた。
それで土井先生と話していたのだから、とても恥ずかしい。しかし、別にそんな泥も気にならないのだから女として相手にされていない事など一目瞭然。
ていうか、あんなに可愛いくの一の子達がいるんだから当たり前だった。あ、くの一の子達が笑っていたのは泥の所為だったのか。
「おばちゃん、あたし頑張るね」
「うふふ、花子ちゃんなら大丈夫よ」
一人で誰もいない家に帰り、一人で食事を済ませ、一人で畑仕事をする。
受け入れていた自分の人生だったが、ここがこんなにも居心地が良く人と接する事がこんなにも心暖まるものだとは思わなかった。
「ありがとうおばちゃん、あたしここで働けて本当に良かった」
零れそうな涙を見せまいと俯いているのが分かったのかクスクスと笑うおばちゃんは立ち上がりお腹がすいたわね、と言う。
「さぁ、私達もご飯にしましょうか」
生徒や先生方に食事を提供した後にご飯を頂く、それが食堂のおばちゃんの日常らしい。
「おいしい、やっぱり一人で食べるのとは比べ物にならないくらい美味しい」
胸がいっぱいで食べれないかと思ったが意外に箸が進んだ。
「お残しは許しまへんで」
そう口癖を言うおばちゃんに笑ってこう答えた。
「こんなに美味しいご飯、残せません」
_____________
"花子さん、お仕事は終わったかしら"
自分たちの夕食を終えて片付けが一段落した後すぐにシナさんが入って来た。にこにこ機嫌が良さそうだ。あー、あんなに綺麗になれたなら世界も変わるんだろうな。
"じゃあ、長屋を案内するわね。お風呂や危ない場所も教えて置かないとね"
"おばちゃん、おやすみなさい"
また明日とお辞儀をして食堂を後にした。あたしの部屋は教師の隣の事務員の小松田さんの部屋の隣なのだ。学園長先生に何かあっても安心しなさいと言われた。
小松田くんの隣とか、なんだか楽しそうでわくわくする。
[
prev /
next ]