■ 12話/けま、という響き。
「あら、七松君は花子ちゃんともうお友達なのね」
「山本シナ先生とも知り合いだったのか?」
お前凄いなとまた背中を叩かれた。あざが出来たらどう責任を取るつもりなのか、嫁になど絶対に行かないから慰謝料だけ頂きたい。
後ろにいる七松さんのお友達もシナさんの友達と言うことで一気に警戒を解いてくれたみたいで、なら大丈夫だななどという声が聞こえてきた。
「シナさんがいなかったら、あたし迫害されてました。絶対。」
そう苦笑いすると、疑うのが忍の仕事だものと言い残し一人席に着いてご飯を食べ始めた。遠くから見てもやはり綺麗だなぁ、ていうかシナさんがいるんじゃ土井先生無理だ。と一人妄想していると、なぁなぁという声に戻された。
「花子!腹減ったぞ、私Bだ!」
だと思ったとお盆を渡せば笑顔で席に着き手を合わせて食べ始めた。
「すいません、私はA定食を」
はいと渡した先には女性とも見間違う白い肌をした線の細い綺麗な子が立っていた。
「俺はBを下さい」
「僕はAを頂きます」
「俺はBだな」
定食が被った子達が言い合いを始めてしまった。あーあと見ていると目の前に中在家くんが立っていた。表情を変えない中在家くんとじっと見つめあってしまった。
「中在家くん」
「気にしないでくれ」
いつもの事だと言ってAと呟いた。あたしは中在家くんが好きだ。勿論、異性的な意味ではないがこの子の性格が好きなのだと思う。
「長次と小平太はもう顔を合わせたのか?知り合いのようだが」
煩い二人組とそれを止めに入り殴られている優しそうな顔立ちの子は置いておいてとばかりに冷静に話を切り出す彼女、いや彼。
「ああ」
と小平太の方を振り向くと、米を口に溜め込みながら「私達は花子ともう友達だぞ!なぁ長次」と米を飛ばしながらいう彼にえ、そうなの?と長次を見るとこくりと頷いた。友達などたまに野菜を買いついでに話していくシナさんくらいしかいなかったのでぶぁっと顔が熱くなった。
「真っ赤だ」
「真っ赤だな」
綺麗な子が唖然とあたしを見ている。ああ、そうだ。そうだよ、照れてんだよ!このやろう。
それになんだなんだと喧嘩をやめて集まってくる三人に顔を見られ更に恥ずかしくなってしまった。
「おばちゃん曰く花子は初心(うぶ)らしいぞ!」
「言うなっ!!」
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名前を聞けば皆覚えにくい名前をしている。とくに善法寺くん。善法寺くんだけは下の名前で呼ばせてもらおうかな。
「けま、けま、うふふ」
私はこの響きが気に入ってしまった。
早く呼びたくてうずうずしている所に教員登場、波乱万丈なこの一日早く終われ!!
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