■ 11話/身の潔白を証明する女神。
「悪い事言わないから早く出ていけ」
うん、まだ居たのかよ。後にしてくれって言った筈なのだが、やはり餓鬼だなこいつは。
「三郎、冷めちゃうよ」
そうだそうだ、冷めちゃうぞ。
「勘右衛門達は先に食べていてくれ」
この個性的な髪型の子はかんえもんというのか凄い名前だ、お金持ちそう。どうするハチ?なんて背の高い子に聞いている。すると、その隣の黒髪がずいっと出て来た。
「俺は先に食べるぞ、今日のA定食には豆腐が付いているのだ」
うんうん、そうしてくれ。仕事にならないからな。
「なに君、豆腐好きなの?」
三郎をちらっと気にしながらも頷く睫毛の長い綺麗な顔立ちの子は豆腐が好きなのだと言う。豆腐の良さを語り出してしまったのでカウンターにくる子達にお盆を渡しながらうんうんと聞いているとついに三郎とやらが動き出した。
「兵助どいてくれ、あんた学園に忍びこんで一体何を…」
「あら?花子さんじゃないの?」
「「…え?」」
二人して声の主を見るとそこにはお年を召した小さいお婆さんがピンクの忍装束を来て可愛らしく此方を向いていた。
この方も教員なんだろうか?
「……何処かで会った事ありましたっけ?」
そういうとああこの格好ではね、と口にしバッと装束を引っ張ると一瞬にして綺麗な、綺麗な?綺麗な!?
「シナさん!?」
私も驚いたが横にいる三郎とやらも知り合い?とばかりに交互に見ている。知り合いも何も良く町で野菜を買ってくれるおばちゃんと同じく常連様だ。しかも、よくついでにお話をする仲なのだ。
「嬉しいわぁ!ここの食堂に勤務になったんですってね!学園長先生から聞いたわ!」
あたしが、え?え?と驚いているとシナさんがふふふと笑いながらA定食を手にした。
「ここでくの一教室を担当している、山本シナです。これからはいつでもお話できるわね」
今日は出張で、今帰って来たばかりなのよと笑う姿に三郎とやらは硬直、他の五年生は自分等の席に着きそんな様子を苦笑いして見ていた。ほら、やっぱり思い過ごしだったのだと。忍の教員とお友達ならはっきり白だという理由になる。
「ほら、みんな呼んでるよ」
背中を軽く押せばうるさい触るなっと振り払われた。あたしが何をしたというのだ、勘弁してくれ。
「良い人、いるといいわね。この学園に」
耳元でこそりと囁かれた言葉にまたですかと苦い顔をするとお姉さんとして心配してたのよと言われた。
「いい話があれば良いんですけどね」
でも年下はちょっと、とそう返せば笑うシナさんの後ろから続々と最上級生がいらっしゃった。実習だから遅くなると七松さんが言っていたのを思い出した。
「あ、七松さん」
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五年生がその言葉にビクリとしたのをあたしは見逃さなかったぞ。
ひそひそと仲良いのかなどと口にする様を見れば最上級生の七松さんはやはり凄いのだと再認識する。
仲良くさせて貰おう、あたしが虐められない為に。
「七松さーん、遅かったですね」
「ん?敬語じゃなくて良いぞ。なんなら呼び捨てでもいい。」
え、それはいーわ。
なんか、仲よすぎになっちゃうじゃん、土井先生に誤解されたらあたしやだよ。生徒とは一線を引きたい、断固として。
「じゃあ、七松。」
「え……そっち?」
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