■ 04話/お仕事ですか。
私の事をお団子とお茶を頂きながらマイペースに話しているとお前さぁとやっぱりこの人が喋り出す。
途中まで人の話を聞ける人じゃないかと感心してたのに。私はじとっと横目で彼を見る。
「ちげぇよ、ちげぇよ!話を無理矢理止めて俺の話を始めようとかそんなオトコじゃねぇよ、俺は!」
掌を返してそう述べる彼、え?そうなの?とお茶をコトリと置く。
「途中でな、あ、鳥です気持ち悪いですね。とか、そういえば昨日山賊と友達にとか関係のねぇ事をだな途中で入れて話を止められると全然先に進まねぇし、寧ろ話が入ってこねぇっつーの!分かるか?」
ベラベラと早口でそう言ってのけるこの人の会話能力の高さに圧倒され、コクコクと頷く。
確かに話の途中、つい気になった事を口にしてしまうのだ。
気になった事はよぉ、またゆっくりと聞いてやるっつーの。とお茶をすする蝙蝠さんは以外に優しいのかも、いやこの人は元から優しかった。
「と、言うわけです。」
話し終わるともう、空が赤みを帯びていた。こんなに誰かに話をしたのは初めてです、と乾いた口をお茶で湿らせる。
蝙蝠さんはそうか、と立ち上がり何処かへ消え直ぐに戻ってくると私の手を引き歩き出した。またですか!?とお勘定がまだです、私まだ若いし牢獄で暮らすのはちょっと、外に出てまだひと月なのに、と頭に浮かぶ言葉を慌てて口に出すと後ろに見える茶屋のお姉さんが「ありがとうございましたー」と頭を下げていた。
「今日は俺の奢りだ。」
二度え?と聞く私にブフっと笑いを漏らしまぁ、今度はお前が俺に奢れよと口癖であろう笑い声を出し掴んだ手を離した。
あ、と声を出すと寂しがってんじゃあねーよ、会うのが最後って訳じゃねぇだろうが、まぁ俺が死んだらまたお前一人ぼっちだがよぉ、きゃはきゃはと言い放つ。
「ああ、でもお前みたいな変な奴、直ぐに俺みたいなモノ好きに出会いそうだがなぁ」
と簡単にフラグを立てる蝙蝠の言葉が本当になるとはこの時、花子は思いもしないのだが。
私はこの人と別れたらまた一人ぼっちになってしまうじゃあないかと、別れるのを嫌がる。
「そんなのは嫌です」
と蝙蝠さんの手をまた取ると。
ちょっ!っと私の突然の行動に驚いたのか声を荒げる。
「そういう意味じゃねぇよ!俺様が、そのアレになってやるって事だっつーの、だから手離せ!」
アレ、とは?
「…お友達?」
ぷいっと顔を背け不満か?と此方をチラ見する。
「いえ、とても…」
とても…嬉しいです。と言葉を告げると鼻がツンとする、ああやっとお友達が一人、出来ました。
満足気に鼻を鳴らした蝙蝠さんが地面を蹴り、木の枝に足を着く。
「泣き過ぎると不細工になんぞ、きゃはきゃは。またな、花子。」
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初めて呼ばれた名前に感動してまた一つ目から涙が零れ地面を濡らす。後ろは宿屋、目の前にはもう蝙蝠さんの姿はないがまだ動けず手で目元を擦っていた。
遠くの木の上で吹き出した様な笑い声と「まだ泣いてやんの、泣き虫」と此方を伺う蝙蝠の姿があったとか。
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