■ 51話/お手紙書いた。
周坊へ着いた。
拙者は今、手紙を書いている。所謂、果たし状という奴だ。
「そんなに見られては書きづらいのだが…」
視線の先には惜しくも拙者ではなく手紙がある。ごめんなさい、習っていないから珍しくてと食い入るように文字を見つめる彼女は遂には墨にまで指を突っ込む始末だ。
「…花子、もし良ければあの外道と奇策士が来るまでの間、拙者と文字の書取を勉強するでござるか?」
「げ?…よ、良いのですか?」
筆を持つのは初めてです、これが「あ」ですか見るのと書くのでは大違いですね、難しいです、けれどとても楽しいです、あれ?白兵さんの字とは全然違いますね何かこう文字が生きていると言うかミミズみたいと言うか。と楽しそうに文字を嗜める彼女を後ろから見て拙者も自然と顔が綻んだ。
毒を取られたとて、腕はなまってはいない。むしろ戦う理由ができた。あの男には決して負けぬ。
「は、白兵さん!白兵さん!」
手元を見れば自身の持つ筆が折れていた。
いや、毒が抜かれたとてここまで熱くなった事などないしまして自身を制御出来なくなる事などなかった筈なのだが…
「白兵さん、白兵さん、"ま"ってこう書いてこうですか?」
「あ、ああ、"ま"はこう書いてこう」
(良い事なのか悪い事なのか)
(次は私の名前を書いてみたいです!)
とがめの使者((い…居づらい…果たし状とやらはまだ書き終わらないのか?))
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