■ 43話/眠りが覚めて。
う…うう、頭が痛い。視界の明けた先にはぼんやりと天井が見える。
そうだ、あの後…私。起き上がればポトリと落ちる濡れた布、この布は?辺りを見回すも白兵さんの姿は無い。
毒は吸い取ったでしょうからまぁいっかと腰を上げるが、そのまま布団にダイブしてしまった。
「…え、力が入らない」
その時、ドタドタと廊下を走る足音が聞こえて来てその足音の主が襖を開けた。
そこに居たのは何とも言えない顔をした白兵さんで、目が合い苦笑いで返すと駆け寄られ強く抱きしめられた。
「…花子殿っ…花子殿…本当に良かった、このまま目が覚めないのかと、拙者は…拙者は!」
この筋力の衰えからすれば大部長く眠っていたのだろう、私は目を瞑る。
「心配無用…な訳ありませんでした、ごめんなさい。ありがとう、白兵さん」
肩にのしかかる重みがやけに暖かくて、なかなか離してくれないものだから私は少しそこで落ち着く事にした。
そうだ。
「白兵さん、あの刀は…」
「ああ…特にここにいる内は必要ないとあそこに置いてあるでござるが、何か?」
そう平然と答える白兵さんに安心し、そうですか…と息を吐いた。
床に雑に置かれたそれには何も感じない、良かった。と呟けば肩を掴まれ顔を覗き込まれる。
「あ…あの…?」
「話して貰うでござる…拙者に隠していた事全て」
そう言った目も刀を想う鋭い目では無く優しい綺麗な透明な色の目をしていて、私はそれが嬉しく、そして申し訳ない気持ちでこくりと頷いた。
しかし間も無く頭の上に置かれた手に白兵さんを見る。
「今日は…やはり話さずとも良いでござる、また後日話は聞こう」
白兵さんは立ち上がり襖に向かう。
「拙者は空きの部屋を借りて来るでござる、花子殿はどうかこのまま」
「……………?」
私は首を傾げる、結構な日数…私は寝ていたんですよね?もしかして、白兵さんはこの部屋で意識が戻るまでずっと一緒に?と聞けば一気に顔を赤くした白兵さんが凄い勢いで私の前に正座をした。
「せ、拙者は!誓って花子殿に触れてはっ…いや、触れはしたが決して変な事はしていないでござる」
そうずいずいと言ってきた白兵さんについ笑ってしまった。
違うんですよ、私が聞いた意味は。
「ありがとうございます、と言う意味です」
とても感謝している、私は手を取り感謝を述べる、すれば白兵さんは眉を下げた。
困ったように微笑む白兵さんに胸がきゅうっと苦しくなった。
「困ったでござる、そんな事をされたら引き返せない…花子殿……」
−−−−ズバァン!!!!
激しく襖が開けられる音がして、二人して其方の方を向く。
心臓が止まるかと思いました。
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