■ 41話/不埒な妄想。
いや、そんな馬鹿なと汗が流れる。別に女とあれこれする事に抵抗など無かった筈だ。
むしろ、そんな行為に慌てるなど…いや、相手が花子殿であるからだ、理由など容易いであった。しかし、花子殿と宿に…そんな事を花子殿から誘ってくるだろうか。
そうして頭をこねくり回す錆白兵その姿を花子は不思議に思っていた。
「あの、白兵さん…宿へ」
「………」
たらたらと冷や汗が流れる、結局行き着いた答えは花子殿に限ってそういった意味では無いと言う事、そして拙者はなんと、なんと不埒な妄想をしていたのか。
恥ずかしくて顔が上げられぬ…
早く用事を済ませたいのですが、何をなさっているのでしょうか。岩の上から動かずに汗をかいて考え事をしているようです…
「白兵さん!行きますよっ!」
できる事なら早く済ませたい、この作業は前の二件で分っている。毒を吸収した後は休まなければならないし、その毒が大きい程、体力の消耗が激しいのだ。
私は手を取り歩き出す。
私よりも背の高い白兵さんの手を引いている姿は少し変だろうが誰が見ているわけじゃないし、町の近くでは手を離せば良いだけだ。
歩かない白兵さんが悪いんですよっ!と後ろを振り返れば、手の甲で顔を隠してはいるが顔を赤くした白兵さんが居て、私はパッと前を向いた。
反則。
反則です反則です。そんな顔をするなんて、私はどんな顔をすればいいんですか…
白兵さんが素直に歩いているので手を離せば沈黙の中にポッカリ空いた距離。
なんだか心がモヤモヤして変な感じ…。
「あ、町です…」
さてと、と宿を探せば直ぐに見つかった。
「良かった、すみませんが今日二部屋お借りしたいのですが」
「すまないねえ。あと一部屋しか空いてないんだよ」
「「え?」」
「見た所、若夫婦って感じだが違うのかい?」
「拙者はいつ嫁いで来ても大丈夫なのだがな」
「ちょっ、白兵さん!」
なんだか、この先色々大変そうです。
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