■ 34話/あらら救済 3
「へぇ、そう。これが私ですか」
「言っておくが俺の模写は完璧だ」
地面に爪で描かれた絵、そして詳細。
これ、まさか…いや蝙蝠さんがこんな個人情報をばら撒く訳がない、鳳凰さんですか。絶対そうだ。
「お、怒るなよ、な?」
「そうですよっ、むしろ良い所しか書いてないじゃないですか!」
そうですっ、誇らしくその大きな胸を張って下さいっと言う蜜蜂くんをとりあえず引っ叩く。ああっ、と言って地面に倒れこみ頬を抑える蜜蜂くんは何だか嬉しそうなのだけれど、勘違いですよね?
この絵、私のコンプレックスの胸が大きく描かれている。そして各箇所に私の説明書き。
剣士、可愛い、乳、超人二十八号、まつげ、ドジ、天然。俺、最後の俺という項目と超人二十八号という意味が理解出来ないけれど、こんな絵が里に野放しになっているだなんて、許せない、許せない、許せない。
「花子さん?」
「うん、まぁこれは良いです。落ちつけ、落ちついて、私」
私は深呼吸をする。
はぁ、少し落ちつきました。この怒りはまだまだ収まらないけれど。
「それで、私を見つけたってことですか?」
蟷螂さんは頷く、後ろで少しビクビクしていた蝶蝶さんも私の様子を伺って出てくる。蜜蜂くんは引っ叩いてから何故か私の横にピタリとくっ付いている。何故ですか、暑いのですけれど。
「あー見つけた!と思ったんだよ、それで三人で本当だーって笑っててよ」
笑っていた、だと?
「待て、落ちつけ花子。笑っていたのは蝶蝶だけだ」
「うわ、ひでえ!蟷螂殿!」
「そこでだ、俺たちは任務を全うしようと思って歩を進めたのだが…」
「蜜蜂が固まっててよお」
私は横にピタリと付く長身を見上げると顔を真っ赤に染め俯く蜜蜂くんがいた。見上げる私にはいつもは隠れている蜜蜂くんの目が見えた。
「…一目惚れ、したんです」
うわ、不意打ちですよっ…そんな顔。
きょどきょど目は泳がせているものの、いきなりそんな言葉を言うなんて不意打ち過ぎます。
それに恥ずかしくなった私は顔を逸らすが、待ち受けていたのはニタニタ笑うその他二人。
「いーねいーね、若いもんは」
「……全くだな、暑い暑い」
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