■ 33話/あらら救済 2
「うわー!またズルした!」
「していません」
横の蜜蜂さんを見れば苦笑い、蟷螂さんを見れば目を逸らされ"すまん"の一言。
「ズリぃなあ、ズリぃよ花子殿!」
「………はぁ」
言って置きますが私はこのゲームにおいてズルは一切していない、それどころが正当に真っ正面から戦っている。なのに、この人はずっとケチをつけてくるのだ。
「もう一度言いますが、私はズルなどしていません!!」
「うわっ!ついに怒った!」
蝶蝶さんは後ろにたじろいだ。いつの間にあんなに遠くに行ったのだろう。
しかし私だって声を荒げたくもなります。蜜蜂さんと一日過ごして次の日お二人に会ってお別れの挨拶をするないなや俺たちともゲームしようぜ!、それはまだ良いとしても長すぎだ。
私が勝ったらズルだと言い張り、彼方が勝ったら俺たちに勝たないと先には行かせないだなんて。
しかも、もうあれから三日ですよ。
怒って当然でしょう?
「蟷螂さん、蟷螂さん助けて下さい、お願いします」
すがりにすがっても顔を背け相手にしてくれない。蝶蝶さんから逃げようとしても凄い早さで回り込まれて、びくともしない力で座らされてしまう。宿から逃げようとしても、です。
「蜜蜂くん、私もう限界なんです」
「花子さん…そ、そんな目で見ないで下さい…」
蜜蜂くんに頼んでも蝶蝶さんには強く言えませんの一点張りで役に立たない。
ただただ顔を赤くするだけ、私は初めて舌打ちをしましたよ。
「ごごごごごめんなさいっ…蝶蝶さんっ!!花子さんを、その…そろそろ解放してあげて下さい」
最初の掛け声までは誉めましょう、なぜ最後の方にいくにつれて声の大きさが尻つぼみになるのですか、身体はデカいくせに。
「何だよ蜜蜂、お前が花子と長く居れるように俺たちが留めてやってんじゃねえか」
「俺たち……」
おいちょっと待てと言わんばかりの眉間のしわと睨みよう。確かに蟷螂さんは何もしていません、ゲームはしたけれど今日は流石に手加減してくれましたし気遣ってもくれる。この中では私は蟷螂さんが一番好きです。
「このままじゃあ僕も花子さんに嫌われて仕舞いますよぉ!」
あせあせとそう言う蜜蜂くんは先ほど私が蟷螂さんにしたように蝶蝶さんにすがる。そうですよ、嫌い、と言う感情はよく分かりませんが苦手にはなりますよ。文通の文だって返すのに三日は置きますよ。
「ほらっ、この花子さんの冷めた目を見て下さいよぉ」
「ぐっ!だってよお、お前等だって里の落書き見てずっと会いたかったんだろうがよぉ」
「ああっ!それはっ…」
慌てて直ぐに蝶蝶さんの口を塞ぐ。
蟷螂さんは顔に手を当てて、あーあと言った感じだ。事情が掴めません。何なんですか一体。
「里の落書き?」
私はいやっその…内緒にしてた訳じゃないんだぜと私が近づく度に後退していく蝶蝶さんの胸ぐらを素早く掴む。
「ぐえ!」
「なんの事か説明してくれますよね、初耳です」
がたがたがた、と震える蜜蜂くんに、私の手を蝶蝶さんから離す蟷螂さん。
「俺が説明しよう、花子」
うん、蟷螂さんなら良いですよ、信頼できますからと笑えば態度違くねっ?と蝶蝶さんが口を挟んできた。
「ちょっと黙ってて下さい」
「……分かったよ。………くっそ」
「何か言いましたか?」
「……………。」
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