■ 47話/はてさて、出発。



奇策士とがめと虚刀流鑢七花に、四季崎記紀の変体刀十二本の内、残り十本を集める旅に出て、三月が経とうとしています。

古くから神々の集まる地とされ、幕府すら介入が難しい自治区、出雲。

その中央にある三途神社の長、敦賀迷彩の所有する千刀・剱こそ、二人が次に集めんとする刀でございます。


さて、とがめと七花が出雲の国で敦賀迷彩と出会っている頃、花子は勿論ですが錆 白兵と共にいました。後にとがめ達と合間みえる事になる周防に向かって歩いております。

私の後を歩く白兵さんは少し何かを考えるように俯き考えていた。どうしたのだろう、鳳凰さんへ着いて行ってからこの調子だ。

雨に濡れて帰ってきたと思ったら酷く何かを思い悩んでいるような、そんなかんじ。私、何かしたでしょうか?

しかし、声を掛けてもまさに左から右に耳を突き抜けて行ってしまっているようで的外れな答えが返ってくる為もう諦めているのだが。


「白兵さん、だんだんと寒くなって来ましたねえ」

「…そうでござるな」

「何か羽織を買いましょうか、じゃあ私は山で熊の毛皮を剥いできますね」

「…そうでござるな」


こんな調子です。もう何を言っても無駄なのかと思うとなんだか悲しくなってきてジワリと瞳に涙の膜が張った。まばたきしたら落ちそうでグッと堪えるがたまりにたまったソレはポタポタと大きく地面を濡らした。


「−−花子殿!?」


異変に気付いた錆はすぐさま何故泣いているのかと尋ねたが唇を噛み締め堪える彼女からはなにも答えが返ってこず、ただオロオロするばかりであった。

教えてやるものか、考えれば分かるでしょう。と考えていれば白兵さんは私の手を取り近くの座れる場所に腰を下ろし何処か痛むでござるか?疲れたのでござるか?と色々な事を聞いてくる。本当に分かっていないみたいなので私は口を開く。鼻につく声で少し恥ずかしい。

そういえば、こんなに直ぐに泣いてしまうだなんて以前の私では考えられない事だった。この旅でわたし、少しは変われた…のでしょうか。



「っは、白兵さん、さっきから私の話何にも聞いていませんっ」

うっうっ、と慣れない嗚咽に戸惑いながら声に出す。

ずっとそうですっ、ずっと。ほ、鳳凰さんと外に出ていって、ずぶ濡れで戻ってきてっう、ば!馬鹿なんですか!?わ、私達っ友達でしょう、言いたい事があるなら言ってくださいっ悩み事があるならば話して下さいっ。私では物足りないですかと、肺活量ギリギリで言いたい事を出し切ればパチクリとした白兵さんが私を見ていて顔が熱くなる。
こ、こんなに感情的になってしまうなんてと顔を反らせば久しぶりに白兵さんのそうでござるな以外の言葉が聞こえた。


「そうだった。友達、でござったな、拙者達は…」

刹那気な表情で空を見上げ地に戻し息を精一杯吐きったと思えば、新しい空気を肺に入れいつも通りの白兵さんが此方を向いた。

私は頭にハテナを浮かべ首を傾げる。


「恋煩いってやつでござる」

恋、そう聞いて顔がボンっと赤く染まる。し、しかし私はっその、実はと狼狽えていれば人差し指を口に当てられる。

「拙者が勝手に好きでいるだけ、花子殿は深く考えないでいい」


正面に向き直り目を閉じた白兵さんは更にこう口にした。

拙者は心に芽生えた初めてのこのむず痒いような気持ちを大切にしたいのでござるよ。



(私も同じ、初めての気持ちばかりです)
(胸がドキドキしたり、ギシギシしたり)
(comment*☆.)


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