■ 32話/あらら、救済。身も心も。
「お前こそ、気をつけろよ」
きゃはきゃは笑う蝙蝠さんはしばらくして一旦真庭の里に戻り報告すると行って、私と別れた。
少し傷が痛々しく残っていたものの、あまりゆっくりしてられないと急いだのだ。
その挙刀流、そんなに強いのでしょうか…
「真庭の里の…復興」
花子がこの時、呟いた意味はなんなのだろうか。自分でも分からずただ口にした、それが正しいのかもしれない。
〆
誰ですか、この人たちは。
何故私の前をこうも塞いでいるのですか、特にこの背の低い羽根の生えた方。
「おおっと、お嬢さんちょっといいかい」
お嬢さん…え?私は僕?とか坊っちゃんとか言った方が宜しいのか、隣の保護者みたいな方は黙って様子を見ているし、蜂のお召し物の方はおろおろ後ろにいる。
「おいって!無視すんなよ!」
「僕、お父上があそこで待っていますよ」
ほら、と手を向けるとぬぬっと眉を潜める。あら、違ったのかしら。でも、あっちの蜂の方は父上という感じではないし…
「ななななんだと、てめえ」
わなわな震え出した。
「俺はっ!確実にお前よりも歳上だぞ!そしてこっちの一番デカイ奴よりもだっ!」
怒った。
「蝶蝶さんっ」
え、ええっ?私は横の大人たちを見やる。確かに、落ち着いてっと言う蜂の方は敬語を使っているけれど…でもまぁ、私は先を急がねばならなかった。
そんな事は今は別にどうでも良い。
「ごめんなさい、失礼な事を言ってしまって」
では、と頭を下げすたこら逃走…というわけにも行かず、目の前にはまたも蝶。
「待った、あんたに用があるって何度言ったら分かるんだ?」
もうっ、遅れて白兵さんに何かあったら責任とって死んでくれるのだろうかこの人は。
初対面なのに用なんて、山賊さんでしょう、どうせ。刀に手を置く。
「何か用ですか?」
「ま、待って下さいっ…僕達そういうつもりでは」
「お前がはっきりしないからだろうが!」
「はぁ…俺達は任務の途中なんだぞ、早くしろ」
緑の人に前にトンッと押され出て来た長身の蜂の方は耳を赤くしてモジモジしている。
「貴方が私に用があるのですか?」
「あ、あっ!はいっ!」
元気に返事をしたものの、それからまた指をモジモジだ。こんなに大きいのに、なんだか可愛らしい人ですね。
悪い人では無さそうだけれども…
「僕と、ぶぶ文通して下さいっ!!」
「え?」
「文通が駄目でしたらたまに会って頂くだけでもいいんですっ、僕が会いにきっ!来ますからっ!」
こてんと首を傾げ考える。
悪い人では無かったのね…まぁ、それくらいでしたら。私はその人の目を覗いた。悪い人は目に曇りを抱えているものだから、覗き込むと狼狽えるがしっかりと私を見据えていた。
「それだけでしたら…はい」
______________
「ついに蜜蜂にも春が来たって訳だな、蟷螂殿。いつも仕事が一番、自分が二の次だからなぁ、あいつは」
「…まぁ、たまには良いか。せっかく上手くいきそうなんだ、蜜蜂には休暇を与えるべきか?蝶蝶」
「そうだなぁ、俺達の任務は不承島にいる挙刀流の姉を拉致する事だろ?」
「島を離れない姉ならば…」
「「急ぐこともないか」」
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