■ 38話/緊急事態発生。
虚刀流、最初は良いイメージは無かったものの、話してみれば只の純粋な若者じゃないか。若者と言っても歳は私よりも上であった。
驚く事に彼女達は既に銀閣さんの斬刀を手にしていた。しかも銀閣さんは無事だと言う、そして一眠りしたら城を出ると言っていたそうだ。
涙を一粒流し喜ぶ私は二人の目もあって直ぐに目を擦った。
「ありがとう七花くん、でも私も貴方と同じ殺して良い者と悪い者の区別がつきませんでした。しかし、大切な人が出来れば分かりますよ、命の大切さが。そして殺してはいけない命も」
今はまだとがめさんに止められているからと理由で殺しをしていないようだ。相手の急所を狙って再起不能にせよ。ようするに殺せと言うのが教えだという。
「いつか、わかります。とがめさんがいつも隣にいるのですから」
そうだそうだと話を変える。
「私にも七花くんのように決めゼリフが欲しいのですが」
「ううっ!そんな花のような笑顔で言われたら考える他ないであろう!」
ふらぁと頭を抑え七花くんの腹に倒れたとがめさん。懐から帳面を取り出し唸りをあげ考え始める。
「微笑ましいですね、七花くん」
「ん?何がだ?」
後ろからとがめさんを抱き抱える二人の姿につい笑顔が零れた。羨ましいなあ。
「うーん、あっ!これはどうだ!?」
それは七花くんにも一回考えたと言うセリフらしく本人曰く最高の出来だと自負しているらしい。
「ほら、私って神に愛されてるじゃん」
「却下、なんだか普通過ぎます」
七花くんは私には何だか変なセリフの方が似合うんじゃないかなどと横から茶々をいれてくる。
「難しいものだな…可愛い可愛い花子が言うのだから聞いて誰もがその可愛さで悶えるようなセリフにしたいのだが」
更に首をうーんうーんと捻り考えるとがめ。考え過ぎて熱を出しやしないでしょうか…
「逆にこれなんかどうだ?ギャップ萌えと言うものを狙ってみたのだが」
私と七花くんはなになに?と二人でわくわくと聞く。
「そこを早よう退かんかい、ぶち殺されたいんかワレェ」
可愛い花子が言うからこその精神的なダメージを与えられるセリフになっているのだ、どうだ?と自身満々だが、それは些か両親が悲しむのではないかと思い断る。
「これは私が個人的に言って欲しいセリフなのだが…良いか?」
「聞かせて下さい」
耳元で囁かれたセリフにまあ!良いじゃないですか!と答えた。そうであろうそうであろう!ではこれで決まりだ、七花聞いてくれと私に指ぱっちんで合図をする。
「私が天に代わってお仕置きよ!」
仕草はご想像通り。
七花はその眩しさあまり目を抑え、とがめは鼻を抑え倒れ込んだ。
冗談だったのですけれど…これに決定のようです。
その時、茂みから現れた人物にとがめさんが息を呑むのが分かった。今はまだその時じゃない、と。
「ま…まさか花子殿でござるか?」
そして一つ確認しておきたい。
いま花子はどんな状態?
A.花子の頬は只今とてもじゃないが人にお見せ出来ない程に腫れて唇の端には拭いたものの血が滲んでいる。
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