■ 36話/再会、そして。
すたすたすた、やっとここまで来た。
道歩く侍や茶屋の娘さん、倒れた山賊を蹴って起こして聞いてみればやはりこの先に錆白兵という日本一と謳われる侍がいると言う。日本一だなんて、やはり白兵さんは凄い手練れだったのですね、四季崎の刀を持っていたのは見て取れたけれど刀を抜いたところは見たことがなかったから私はそれにとても驚いた。
少し前に口々にここを通ったと話す方々は性別構わず…目がハートですよ。何したんですか、白兵さん。
足早にこの先の村を目指す事とした。
「あ………」
しかし目の前にいる方は私が探していた方とは違う白い髪。
それと、その隣にはとても背の高い…そうか、あれが蝙蝠さんの言っていた…
「虚刀流…」
「おお!花子ではないか!七花、此奴が前に言っておった私の友達だ」
おお、そうかと言って上から下までじろじろ見てくるこの七花と呼ばれる男性。
背は高く、一切無駄がない身体つきをしている。見た所やはり刀を持っていない。肉弾戦で刀に勝てるんでしょうか。
「ふーん、あんたが花子さんか。案外に普通だな」
かちん!
なななななんですか、この人。いきなり普通だなんて失礼にもぼどがありませんか?そうですが?どうせ今まで会った事がある誰よりも目立たなければ特徴もありませんよ。この野郎。
「がっ!七花ぁぁぁ!」
ちぇすとーっと何やら変な掛け声と共に拳を腹に喰らわせるとがめさん。いてて、と腹を抑える虚刀流だがその鉄板みたいな腹で何を言ってるんだろうとじとりと見る。
「しかしよぉ、とがめ。言っても俺はまだ島を離れて三月程しか経っていない。そして会った人の数も僅かだぜ?」
他の女と比べてみろって言われても無理があると言う虚刀流に失礼であろうが!と拳を喰らわせられながら"でも"と話を続ける。
「刀を持っている女、聞いた事も見た事もないな」
人懐こい笑顔、話し方…私が想像していた虚刀流とは違う姿に少し安心した。
こう、もっと凶暴で手の付けれない輩かと思っていたのだけれど。
「とがめから聞いた話じゃあ、一人で男共を倒したって聞いていたから筋肉隆々な男みたいな女だと思って想像していたのによお」
拍子抜けだぜ、と抜かす虚刀流。悔しい。
「私も同じ気持ちです。虚刀流、拍子抜け」
そうか!と笑いながら此方を向く、一切君の事は褒めていないのだけれど。
「むしろ、良くも蝙蝠さんをぼこぼこにしてくれましたね」
そう言った私に驚いた顔をしていたのは虚刀流ではなく、隣にいたとがめさんだった。彼奴と会ったのかと。
「ええ、彼はとてもボロボロでしたよ。しかし、とがめさんには感謝しています」
私は彼女の手を取りおでこにつける。
「殺さないでくれて…本当にありがとうございました」
彼女は約束したであろう!と顔を真っ赤にしていた。可愛いです。ほろりと涙が流れそうな場面であるはずなのに私はじろりと七花くんを見た。何故なら、なぜか彼が準備体操をしているから。
「さてと、俺は準備万端だぜ花子さん」
汗がたらりと流れ頬を伝い落ちた。
手を握ったままのとがめさんはわたわたと慌てて止めるが構える虚刀流は止まりそうにない。
「七花ぁぁあ!これは命令だ、花子に手を出すでないわあああ!」
それを片手で制止する。
「−−!?花子?」
「いいですよ虚刀流、私は多分おなたの予想よりも弱いですけどね。是非、私にも虚刀流の戦いを見せて下さい。」
さて、どうなることやら…。
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