■ 28話/斬刀、鈍 前編。
×連載では紹介していませんが、暇な時に主人公は約束どおり訪れている訳で、砂漠は熱い訳で…
あ、暑かったぁ…
あの襖を開けるのはまだ慣れてはいない。まだ、銀閣さんは無事だろうか。
足早に部屋の前まできたはいいが、ほんっとこの襖、どうにかなりませんかねっ!
ガタガタガタガタ!!
ガタガタガタガタガタガタ!!
「銀閣さんっ、居ますか、まだ生きていますかっ!?」
ガタリ。
普通に空いた襖からはおいおい、失礼じゃねぇかと言う声と共に銀閣さんが顔を出した。
「いつにもましてうるせぇなあ…」
ほっとひと息つき中に入り定位置に収まる。この四畳半は落ちつくのです。
「んで、今日はなんだってんだ?」
物騒な事言いやがってと口角を上げる銀閣さんはこの数ヶ月で私に対して打ち解けてきてくれたと思う。
かくかくしかじか、と説明をすると目をパチクリさせる銀閣さんがいた。
「へぇ、普通の娘じゃあ無いとは思っていたが…」
このなまっちろい身体にそんな秘密が隠されていたとはねぇと二の腕をぷにぷに触られる。セクハラですよ。
「オジさんやめて下さい。」
「ははは、ひでぇな」
それで、本題に移りますが…と佇まいを直しその腰に刺した刀を指差す。
「その刀、触らして下さい」
「拍子抜けだ」
もっと凄いことを言い出すのではないかと身構えてしまったとくつくついつもの様に意地悪に笑った。
「そうだなぁ、只で触らせるのは忍びねえなぁ」
うーん、とひとコンマ考え声をあげた。
「何ですか、その変な笑いは」
「お前は本当に何もかも失礼な奴だな、十八にもなってそんな性格だとモテねぇぞ?」
そうやっていつも虐めるんですから、ふふふ。
「私、求婚されましたよ」
「は?」
「他の男の方にもお付き合いを迫られましたし」
まだまだイケるんですよ、私。と胸を張ると眉に限界まで皺が寄った彼が睨んでいるではないか。え、あの、怖いですよ、いつもみたいに冗談ですよね、とたじろげば手を顔にあて、はぁっと大きく溜息を吐いた。
「お前ねぇ、それ、受けた訳じゃねぇだろうな」
がっと肩を掴まれ、え?と固まった私がいました。
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