■ 27話/さらば我が愛しの。
「この先どうするつもりだ」
私たちは宿を離れ小道を二人で歩いていた。
どうするか、だなんて聞かれても旅を続けるしかないのだけれど。
「我は先程も説明した通り刀集めをせねばならぬのだが、お主を連れて行く事は出来ない」
真庭の里の事であり関係のないお主に危ない真似はさせられぬ、と苦笑いされてしまった。
別に行きたいだなんて言っていないじゃないですか。頬を膨らませるなと笑われたがそんな事もする訳がない。
「寂しければ嫁にくるか?」
「遠慮します!」
それに、寂しい事には慣れていますと鳳凰の考えを却下すると頭を撫ぜられた。
子供扱いしてっ、ああ、でも三十二歳のこの人からしたら子供なのだろうか…。
「まったく…行きづらくなるだろう、花子殿」
名前を呼ばれ、鳳凰の方を向けば何かがふと唇に触れて離れていく。
木に飛び移る彼はふふふと笑っていた。
して、やられた。
「ご馳走様、殴りたければまた今度。これを糧に我は里の為に頑張るとしようかな」
ではまた直ぐに会いにくる、と足早に消えた鳳凰の匂いだけがまだここに残っていて、私も歩みを進めたが頭が回らない、それどころが顔が沸騰しているかのようだ。そして、私は木にぶつかった所で我に返った。
「………接吻、又の名を口吸い」
どこを歩いても木にぶつかり、尻餅をつく。それを何度も繰り返しデコが赤くなってしまっていことだろう。
尻餅をついた場所にそのまま膝を抱えて頭を埋めた。
「この胸の高鳴りはなに…死んでしまいそう…」
そうして一刻ほど経った時、「刀集め」という言葉を思い出した。
錆さんと銀閣さんは大丈夫だろうか?とがめさんも方な集めをしているようだし。
「こんな事をしている場合ではないですね…」
私は着物に付いた土を払い、立ち上がる。
久しぶりに銀閣さんの所に顔を出しにいきましょう。
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