■ 26話/療養しましょう。




目を覚ますと天井、横を見渡せばおでこから水を含ませた布が落ちる。
水の入った桶、そして窓辺でこくりこくりと船を漕ぐ鳳凰さんが居た。

布を手にし起き上がる。

「………わたし」

「起きたか…本当無茶をしてくれる、どれほど心配したか分かっておるのか」


窓辺から私が起きた事に気づいた鳳凰さんがこちらに歩きながらも説教を始めた。
何度もすみません、すみませんと謝り倒し、看病してくださったのですね、ありがとうと手を取ると、とても驚きたじろぐ彼がいた。

「なっ、あ、当たり前だろう…お主を大切に思っているのは嘘偽りない事実なのだからな」

耳の先が赤くなっている事を彼は気付いていないだろう、いつになく仏頂面でそう殺し文句を惜しげなく私に言う。

「ありがとう…」



ところで、と私は話を切り出した。触った瞬間襲った息苦しさと頭痛。そしてその後の刀の禍々しさが消えた、と。

「やはりな、他に黙っている事は無いだろうな」

ぐいっと心配するような面持ちで聞かれたかこれが全て。自分にも一切分からないのだ。

「そうだな、単刀直入に言えば毒気を吸ったと言う所だろうな」

「毒?…あの四季崎が作る変体刀を何本か見た事がありますが、どれも少しでしたが禍々しい気を感じましたが、それが毒?」

触ったのは絶刀.鉋が初めてでしたが、と言えば溜め息を大きく吐かれた。

「お主の家系だが、山田流は相手の血を纏い戦う。しかも、自分からは戦いを望まぬのだろう…」

なんとも矛盾した流派よ、血を好むが戦いは好まぬとは。

何が言いたいのですか!とくつくつ喉を鳴らす鳳凰に問いただした。


「すまぬ、すまぬ。それは好戦的、つまり少しでも自分に邪な気持ちを抱く者の血を必要としている。そして、その血には所謂"毒"にまみれていると言った方が伝わりやすいか」

「私自身の血にも他人の血よりは控えめですが反応しますけど…それは?」

「それはお主の血統だから、ではないのか?危機に面した時に技が使えぬでは困るであろう」

「四季崎の刀にも毒が?」

「少しなりとも毒が存在するのだろうな、その刀の素晴らしさに魅了され、欲望に駆られる。お主は絶刀.鉋の毒を吸収した」

まぁ全て考察だ、と告げる鳳凰さんは私の様子を伺っている。少しでも思い当たる節があるのならばその考えは命中しているのだから。

しかし、そうですかと納得できるものならしたいが毒を吸収する力が私の家系にあるなど聞いた事がないしそんな会話にもなった事はない。
いや、待てよ。昔、父様が…「父様は好きかー?桃は?毒は?団子はー?」とはははと笑っている父様を思い出す。あの時は何言ってんだこの馬鹿親父はと思っていましたが「あはは、父様は全部好きだぞー」と阿呆面の父様はあれで嘘はついた事が無かった。

「何か思い当たる節があったようだが」

がっしりと手を掴まれる。

「無理はしてくれるなよ」

いつもは真正面でずいずいと有無は言わせぬとばりに寄ってくる鳳凰が俯き言った言葉に胸が苦しくなった。

「………はい」


______________


「あれ?そういえば、蝙蝠さんは?」

「仕事に行った。まったく酷い奴だなぁ、蝙蝠は、ははははは」
(comment*☆.)


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