■ 25話/この物語が動き出す。
「へぇ、それが絶刀.鉋ですか」
見れば鍔や鞘がない。よく喉が掻っ切れなかったなとつくづく蝙蝠さんには興味が湧く。
「花子殿、何故絶刀ではなく蝙蝠を見ておるのだ…」
眉間に皺を寄せずいずいと言い寄ってくる。それを右手でストップと止め、蝙蝠さんが自慢げにふらふら揺らす絶刀をまじまじと見やる。これは…
「なんだ、何だぁ?花子もこの刀に惚れちゃったって感じ?まぁまぁ落ちつけ、しかもこの刀すげぇ特性を兼ね備えているんだぜぇ」
よっ!と指先に刀の先を乗せバランスを取り遊んでいる。
「この絶刀.鉋はな、頑丈さに主眼を置いて造られた刀なんだよ。刀なんざ消耗品だから、使ってりゃ折れるし曲がるし、よく切れなくなっちまう。ところがこの鉋は違う。本当に折れないし、本当に曲がらないし、だからこそいつまでもよく切れるのさ。こいつは直刀でありながら、何をしたって刃毀れ一つ起きねぇんだ。象が踏んでも壊れない日本刀!こいつは高く売れちゃうぜ?」
とても嬉しそうにきゃはきゃは笑う蝙蝠さんに賛同して一緒に良かったですね、と笑いたい所だがこの刀からも感じられる禍々しい気が少々気になっていた。
これからのナニカが脅かされるようなそんな気がした。
私は触っても良いですか?と蝙蝠さんに首を傾げる。
「やめておけ、汚ない」
鳳凰さんの話は流して手を差し出す。
「え、まぁいいけど、ちょっとだけだぜ」
体液まみれのそれをずいっと突き出し、それを私は躊躇する事なく掴んだ。
ドクン!
喉元を大男の力で締められるとも取れるほどの息苦しさ、激しい頭痛に襲われた。
「花子!?おいっ、どうした!!」
「貴様の体液の所為ではないのか!?花子!ゆっくりと呼吸をしろ」
はっはっ、とだんだん早くなる呼吸を宥めるように背中をさするのは鳳凰さんだろう。目の前にはちらちらと顔を覗き込む項目の姿が見える。
「…っは…っは…ぐ、」
大丈夫かと耳元で大きな声が二つ。
ああ、意識が朦朧としてきました。
「…でも、良かった…無く…な…」
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「大丈夫か!?おい、花子!花子!」
「耳元で大きな声を出すな、寝ているだけだ。お前は早く丹波の不承島に行け」
「はいはい、ってあれ?こんなに軽かったか、この刀」
「…………。」
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