■ 23話/矛盾だらけ。

ばちーーーん!!


頬には大きなモミジの跡。
花子は思い切り鳳凰を叩き息を乱していた。ぜーはーと息を吐き出すその姿をにこにこと見ている鳳凰にもう一度喰らわしてやろうかと手を上げる。

「我の嫁に来るのだから、そのくらい威勢が良くなくては困る」

「何を勝手な事をっ!」

「ふふふ、その内。その内にお主が我を自ら欲しいと望むであろう」

我がそうさせて見せようと喉を鳴らした。顔は熱くなるばかりで冷める事を知らない。

もう、限界です。

「出て行きますっ…その、此処は?」

勢い良く言ったものの此処が何処だか分からない私は申し訳なく鳳凰に聞いた。

「もしや、真庭の…」

「そうであればお主は帰せない。何故なら里は部外者を嫌い、入ったものは生きて帰さぬ」

お主が我の求婚に頷けばいつでも連れて行くが、と頭をぽりぽりと掻いた。無理強いはせぬ。と呟く彼に言っている事とやっている事が矛盾していると張り倒したかったが、ここが元いた場所からそう離れていない事にホッと一息吐いた。





「ついて来ないで下さい」

「それは聞けぬ話だな、何処へ行くつもりだ?錆白兵の所ではあるまいな」

急に出てきたその名前に疑問を抱き、なぜ白兵さんの話がでて来るのだと尋ねれば言葉を濁したが特に意味はないと繋げた。

「ついて来ないでっ」

「………そんなに我が嫌か」

「いやっ…そういう訳ではないです…けれど」

嫌かと聞かれたのに頷けなかった。どうしたら身を解放してくれるのだろうと考えを巡らせ鳳凰の正面を向く。

「私と仲良くなりたいのですよね」

「ああ」

「でしたら、お友達から始めましょう?私も貴方を嫌いになりたくありません」

私のその言葉にぽかんとし次の瞬間、鳳凰はくつくつと腹を抱えて笑った。
むむっと眉を寄せるとすまぬと目尻に溜まる涙を拭う。

「この歳で友達からなどとは大きな声では言えぬが、花子が望むのであれば」

よろしく頼むと手を取られ握手かなと思ったがそうではないらしく、すたすたと手を引っ張られ前を歩かれた。

さっきから掴まれる手が傷のない方の腕なのは、やはりこの人なりの気遣いなのだろうか。

「では、今日一日は我に付き合って貰おう」



この後、茶屋でたらふく団子を食べ互いの話というよりは鳳凰は私の話ばかりを聞いていたように思う。団子を食べ茶を飲み、頷きながら自分の事のように楽しそうに話を聞いてくれた。

「友達ならば、開放してくれますよね?友達とはそういうものでしょう?会いに来て下さい。また、あなたとお団子が食べたい」

「…してやられた。が、我はお主を諦めるつもりは毛頭ない。また、会おう−−−」

「−−−ー!」

「−−」

強い風が吹いたと同時に姿が消えた。
一人残された私は一粒流れる涙を拭う。



____________

別れを告げ一歩踏み出した時、囁かれた言葉に唇を噛んだ。

"我のものになればもうあの刀を使わせぬ、悲しませもせぬ、一生守ると誓おう…"

悲しくなどっ、ない…刀を持つ事に躊躇いなど!私は、剣士なのだから…

"なんてな。気にするな、戯れ言だ"







その時、砂利を踏む音が後ろから聞こえた。

「誰、ですか?」


(comment*☆.)


[ prev / next ]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -