■ 22話/恋は台風止まる事なく。


視界がぼんやり明けた…


ここは何処。


「やっと、目を覚ましたか」

待ちわびたぞ、と言う赤い衣に包まれたその人は辺りを見回すまでもなく私の隣に寝ていた。

横を向けば鼻と鼻がくっつきそうなほどに近く、寝ぼけ眼をパチクリさせた。展開について行けません。

しかも、枕ではなくこの方の腕とは。

「なっ、何故!こここのような事をっ!」

急ぎ起き上がる花子を、ん?と不思議そうな顔で見れば鳳凰はその慌てように口元が緩まる。

「何故か、この状態を見てまだ分からぬか?何故、お主が死んでおらずここで寝ていたのか。答えは一つであろう」

よいしょと布団から起き上がり身なりを整えながら話し始めた。
花子はそれを只々呆然と聞いているしかなかった。そして、意味が分からなかった。刀で挑み勝負に負けたならば殺されても致し方ないと思っていたからだ。

ズキズキと痛み出した腕を見やると丁寧に包帯が巻かれていた。この方が?
その腕を触り彼を睨んだ、睨み慣れていないから正しくはただ見つめているだけなのかもしれないが。

「お主は勝てずとも、我を満足させてくれた」

そして、と言葉を続ける
「お主の事をよく知りたいと、興味が湧いたのだ。約束も勿論守ろう」

「知りたい?何を…知りたいのですか?」.

布団を隅に、鳳凰は窓際に腰を掛け花子を見据えた。口元は弧を描き、実に楽しそうだ。

「好きな食べ物」

「は?」

「趣味、嗜好、年齢、お主の全てが知りたい。少し話さぬか、時間がない訳じゃああるまい」

「少し…話すだけで良いのですか?私を逃がして下さるのですか」

逃がす?と眉を寄せた鳳凰はへらりと笑い手をひらひらさせた。何故そんな事を、と。

「監禁など悪趣味な事はせぬ。会いたければいつでも会いに行こう、しかし…」

「しかし?」

「花子が望むのであれば我は監禁でも何でも叶えてやるが?」

その言葉の意図に疑問を持ちつつも、首を思い切りぶんぶんと横に振った。殺し合いをした仲なのに何ですか、この変わりようは…

「何やら不思議そうだな」

「何が望みですか…態度が変わり過ぎです、何でもするだなんて」

「ふむ、そうか。では単刀直入に言わせてもらおう。」

窓際からすっくと立ち上がり花子の所までスタスタと真っ直ぐに歩いてくれば目の前で止まりにこりと笑った。

「嫁に来て欲しい」

ああ、今直ぐと言う訳では無い、お主が順序を踏みたいと言うならばそうしよう。まずは茶屋にでも行くか、我は団子が好きなのだ。そうだ、子供は三人がいいな、お主とならば女子でも男子でも強く可愛らしい子が産まれるであろう。

延々と一人で先に進んでいる鳳凰を呆然と見つめ格好は良いのにとても残念な方なのだなと肩を落とした。

帰っても良いだろうかと襖を見つめたその時、顔に手が伸びてきて思わずビクリとしてしまった。背中に壁があたり冷んやりする、何故こんなに胸がドキドキするの?


_____________

"我と唇を交わした事は覚えているか?"

"や…やめて下さい…"

近づくその端正な顔立ちに心臓がこのままおかしくなってしまうのではないかと思った。


(comment*☆.)


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