■ 16話/武者震いと言う名の。
とがめさんと離れて数日が経ち、晴れ晴れした天気の下で遭遇した人に私は呆気にとられていた。生まれてこのかた私はこんなにも困惑した事は無いと思うのです。
「我とお茶でも如何かな」
全身赤いその鳥は私を上下、品を定めるように微笑み見下ろしている。しかも随分と背が高い。
ナゼ コウナッタ?
ああ、絶対に鳥だこの人。何なんだろう、足とか手とかもろ私が嫌いな鳥ですよね。今の時代には鳥から人に化けれたりするのですか?いや、狐と同じ要領できっと化けて私を試しているのですね。
ここは怖がらずに接してあげなければと意気込む。
「貴方はどちら様ですか?」
「ん?何故そんなに震えているのだ」
たたたいへんです、近づいて来る怖さあまりに外見に気持ちが現れてしまった。
「武者震いです」
「そうか」
どうにか誤魔化せたのか、口元が笑っているからバレてはいないみたいだ。バレたら化けれるくらいの動物なのだから私など喰らわれてしまう。決して、この邪な気持ちバレる訳にはいかない!!
「すまんが、お主と戦う気はないのだ。我は休暇中でな」
休暇…だと?
鳥にも休暇、いや仕事自体存在していたのでしょうか。ほら、虫を運んで来たわよ、さぁ給料だみたいな会話をしていたのですか、あれは。
悶々と心の中で葛藤しているとその赤い鳥は言う。
「噂を聞いてな、一度お会いしたかったのだ。花子殿」
噂、私の話が鳥仲間達にも…?
「どんな人物かと思えば」
顎を指でくいっと上げられ目線を合わせられる。目を瞑っているのだろう赤い隈取が付けられたその瞳が近づいて鼻先で止まった。
「実に可愛らしい風貌だと我は驚いた」
がくがくと足が震えている。
「故に、話がしてみたく貴方の前に参上したのだ」
その瞬間、私の口から魂がにゅるりと出てきた気がしました。
その後は記憶にありません。
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"おっと、まだ何もしていないのだが…"
"そこの木陰でひと休みさせるとしようか、実に充実した休暇になりそうだ"
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