■ 14話/物語が動きそう。
わぁ、こんなに華やかな恰好をした事なんて初めてだ。私は目を輝かせながら自身の恰好を見つめた。
「うむ!流石、私の見たてが良いだけはあるな。まぁ、元がしっかりしておるからなのだが。」
とがめの着物よりも露出を低くしてもらって良かった。途中までめちゃくちゃ推されていたが、あんな姿では恥ずかしくて町を歩けなくなる所であった。
しかし、これは…動きやすくそれでいて、可愛らしい色や形だ。
「ありがとうございます」
「いやいや、お礼を言われる事はしていない。」
なんせ、私達は友達なのだからなと言い、次は甘味屋だ!と私の手を取り歩く。
じゃりじゃりと地を踏みしめる足取りがいつもより軽く、耳に響く二人分の砂の音がなんだか心地よくもあった。
誰かと歩く、という行為はこうも胸踊るものなのだなと頬を緩ませた。
「なんだ?」
笑っていたのを不思議に感じたのかそう尋ねてくるとがめさんに一言いえ、嬉しくてと返せば笑顔が返ってくる。
「私もだ!」
さて、何を食べようか!と甘味屋に入り品書きを目にする。甘い物に目がないとばかりに団子とぜんざいを大量に頼みまくる彼女に冷や汗が垂れた。
「た、食べますねぇ…」
どんどんと串が皿の上に落ちていく。
どこにこの量が入っているのであろうかとぜんざいを横で啜っていると、とがめがなぁ、と私に神妙な面持ちで話しかけた。一体どうしたというのだろうか。
まさか、もう私お腹いっぱいなどと言うんじゃありませんよね、この大量にある団子はどうするんですか、お持ち帰りにしたら三食はもちますよ。
「お願いがあるのだが」
「はい?」
「私の旅に着いて来て欲しい」
「はい?」
なんだ、団子は食べれるのか。
「お話を聞きましょう」
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「かつての戦乱の時代…。伝説の刀鍛冶「四季崎記紀」の作った千本の刀の数こそが、戦局を大きく左右したという話は知って
おるか。」
「ええ、父から話だけなら」
「幕府により国が統一されはしたが、幕府は四季崎の刀を恐れ「刀狩」を行い、988本までも収集したのだ。しかし、残り12本こそが、988本を試験台にした完成形変体刀であることが判明した。」
「そうでしたか」
「私はその12本を集めているのだが」
キラキラと輝く瞳を此方に向けてくるが、私は期待には答えられない。
「お断りします」
「え?」
「…お断りします」
えーーーーーー!!何で何で私達友達であろう?!と慌てふためくとがめの姿が甘味屋のお客の目を引いたという。
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