■ 11話/此れが俗にいう垂らし。
お金がこんなに。
「ありがとうございました。」
「いや。」
口数少ない錆さんは結局山賊達を換金して貰うまでついて来てくれました。しかも、私とお友達になっても下さいました。
父上、最初に立てたノルマ三人達成しましたよ。
「それじゃあ、また。」
私は錆さんに御礼をし、後ろを振り返る。
「お、おい。ちょっと待つでござる、」
後ろ手を引かれて振り返ると、慌てた様子の錆さんは腕を掴んだまま動かない。
あ、やはりお金は分けた方が…と懐に掴まれていない方の手を伸ばす。
「そういう事ではない。」
では、なんなのだろうと首を傾けるとやっと腕を離してくれた。
見た目はこんなに美麗でもやはり男の方、力は強くて腕が少し痛かった。
「す、すまぬ…しかし、友達になって直ぐに別れるとは変でござろう?」
「そうでしたか、私それ程友達が多くいなくて…」
ごめんなさいと言うと別に謝るような事じゃないと微笑む彼は父がいう所のタラシでは無いのかと一瞬頭を過ってしまった。
この笑顔にころっと落ちてしまう男性は多いのではないだろうか。
「あの…錆さん?」
「白兵だ。」
「白兵さんは俗にいう垂らし「違う。」」
「そうですか。」
人里離れ暮らしていて、それ程詳しくはないがそれはそれは父の昔の武勇伝を毎日の様に聞かされていたから少しくらいの知恵はある。
「では、花子殿。其処の甘味屋に入り、話を色々聞かせて頂きたい。」
話をですか、一体何を聞きたいのだろうと思いながら先程とは違う、やんわりと握られた掌を見た。
これは俗にいう手を繋いで歩くというものではないのか。周りの女の方達が白兵さんを見ているのが分かる。
そしてぎゃぁぁあと騒いでいるのが聞こえ白兵さん、白兵さん、気付いて下さい。本当やめてくれ、と思うしかなかった。
中に入るとそれ程混んではいなく、すんなりと席に着けた。
歩いて来た挙句、色々なハプニングに身回されて案外疲れていたのか自然にほっと一息吐いた。
「長旅だったか。」
私の様子を察したのか、そう告げてくる彼に苦笑いで返した。
甘味屋のお姉さんは机にやってくると注文する白兵さんに顔をピンク色に染めいかにもときめいた顔を抑え早足で去っていった。
やはり…白兵さんは垂ら…
「そうだ、花子殿。拙者よりも早く友達になった者の事を話してくれ。」
そんな様子を気に求めず私に訪ねてくるものだから、天然というものなのだと確信した。
「ここへくる前に私が旅に出た理由は話しましたよね、えーと…私が初めてあった方は忍者の方でした。」
忍者と言った時点で眉を潜める彼にえ?と返すと続けてくれ、と返される。
「忍者と言っても、とてもお喋りで面白い方でした。笑い方も特徴的で…」
何かを考えている様であったが話を続ける。
「一人ぼっちの私に友達になってやると言って下さいました。私の大切な友達です。」
そうか、とお茶を啜るとつかぬ事を伺うがそれは男かと聞かれる。
「そうですが、知り合いでしたか?」
「いや、気にするな。」
二人目は、と銀閣さんの事を話し始める。私が砂漠で倒れていたら助けてくれてと続けたら砂漠という言葉に引っかかたのかまたも眉を潜めた。
「もう来るなと言われたのですが、私が無理矢理また来る許可を頂きました。とても素直じゃない優しくて強い方でした。」
「そうか…またもつかぬ事を伺うが、それも男か?」
そうですね、男の方ですと告げると眉をピクピクとさせ微笑んだ。怖いです。なんだか、笑っている様で目が笑っていないのですが。
「それで三人目は」
「白兵さんですよ?」
そう言うと幾ばくか微笑みが優しくなり、私も安心した。
安心ついでに目の前にある団子に手を伸ばすと手を掴まれた…お団子。
「友達以上…」
何を言っているか分からず、団子も食べれず「は?」とだけ返す。
「拙者と友達以上になって頂きたい。」
じっと見つめられ、綺麗な目の色が視界に入る。それは、父が言っていた恋人という事だろうか。
構図にするとこうなる。
"他人→友達→恋人→婚儀"
詳しい詳細は知らないが恋人は最終的に婚儀を交わし夫婦となるものだ。真剣な眼差しを団子へ移す。
「ごめんなさい。」
____________
その後、長々と手を取られたまま日本一とか幸せにとか言われたがただ私は団子が食べたかった。
「ほんと、ごめんなさい。」
まだ、分からないのです。
ああ、蝙蝠さんと銀閣さん元気にしているだろうか。
[
prev /
next ]