■ 10話/天晴れ見惚れた、その姿。
拙者は見た。
あの微かにしか目に追えぬ、剣さばき。長く剣の道にいる拙者でさえこうも追う事が出来ぬとは…。
しかし、名のある剣客にこの様な女がいるとは聞いた事がない。
あの社に住む神主、道場を守る娘。変態刀を持つものぐらいではないか…と考えを巡らしていた。
綺麗に笑い、刀についた血を払う娘。
先程の物静かな振る舞いは何処へいったのか、正にこれこそが剣の毒に侵された人ではないのか。
しかし、圧倒された。
全存在を剣にのみ懸け、それ以外は眼にも入れず生きてきたつもりであったがゆえ、見惚れたその娘に興味が尽きない。
「懸賞が掛かっている。」
などと口に出してしまった。
あまり、人と関わる事をしない自分自身に驚いた。
木の影に隠れているのには、まだ気づいていないようだ。娘は刀を鞘に納め尻餅をついて命を乞う男たちの後ろ首を殴打していった。
つい、口から息が漏れ手で抑えた。
なんと可愛らしい気絶のさせ方でござろう。
しかし、気絶をさせたらこの先町までどうするつもりであろうか。
首を抱えてどうしましょうと呟く娘、関わったなら最後まで…
姿を見せ名乗り男達を起こした後、自らの足で歩かせた。
成る程、近くで見ると端正な顔立ちをしている。しかし、この様に興味がある女を横に連れ歩くのは初めてだ。
名を聞いたが、噛んでしまった。
なんと、格好が悪い事を…目の前にある男の尻を蹴り鬱憤を晴らす。
山田 花子殿と言うらしく、礼を言われた。しかし、拙者が勝手にした事にわざわざ礼など何と礼儀に富んでいるのか。
道中の他愛ない会話で花子殿への興味は更に高まったのだった。
友達作りとはまた奇怪な旅を…拙者は別に立候補など絶対したくないのだが…手順を踏むのが妥当でござろう。
「その友達とやら、拙者もなっても良いでござるか。」
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君の笑顔は100万ボルト。
ときめいたでござる。
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